116F68

次の文を読み、以下の問いに答えよ。

50歳の女性。発熱を主訴に来院した。
現病歴:3か月前に大腸癌と診断され、左鎖骨下静脈に中心静脈ポートを造設し外来で抗癌化学療法を行っていた。3日前から悪寒を伴う発熱を認め、改善しないため来院した。
既往歴:3か月前の大腸癌の診断以外に特記すべきことはない。
生活歴:ADLは自立しており夫と2人暮らし。喫煙歴、飲酒歴はない。
家族歴:母親が乳癌で死亡している。
現 症:意識は清明。身長157cm、体重52kg。体温38.3℃。脈拍102/分、整。血圧134/76mmHg。呼吸数16/分。SpO2 97%(room air)。眼瞼結膜は軽度貧血様であり、眼球結膜に黄染はない。甲状腺と頸部リンパ節を触知しない。心尖部にLevine 2/6の全収縮期雑音を認める。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦で、肝・脾を触知しない。肋骨脊柱角〈CVA〉叩打痛を認めない。下腿に浮腫や圧痛を認めない。左鎖骨下の中心静脈ポート造設部に発赤と疼痛を認める。
検査所見:尿所見:蛋白(−)、糖(−)、潜血(−)。血液所見:赤血球360万、Hb 8.5g/dL、Ht 26%、白血球11,000(好中球84%、好酸球1%、好塩基球1%、単球6%、リンパ球8%)、血小板18万。血液生化学所見:総蛋白6.0g/dL、アルブミン2.9g/dL、総ビリルビン1.0mg/dL、直接ビリルビン0.2mg/dL、AST 42U/L、ALT 58U/L、LD 321U/L(基準120~245)、尿素窒素28mg/dL、クレアチニン1.0mg/dL、血糖98mg/dL、Na 133mEq/L、K 4.1mEq/L、Cl 97mEq/L。CRP 12mg/dL。心エコー検査で中等度の僧帽弁逆流を認める。疣贅は認めない。血液培養検体を2セット採取したのちに入院した。左鎖骨下の中心静脈ポートを抜去し、抗菌薬治療を開始した。
入院翌日に2セットの血液培養検体の両方から、グラム陽性のクラスター様に集簇する球菌が検出された。

最も可能性が高い原因微生物はどれか。

Clostridium perfringens
Enterococcus faecalis
Haemophilus influenzae
Staphylococcus aureus
Streptococcus mitis

解答: d

116F68の解説

【プロセス】
①3か月前に大腸癌と診断
②左鎖骨下静脈に中心静脈ポートを造設し外来で抗癌化学療法
③3日前から悪寒を伴う発熱
④心尖部に全収縮期雑音
⑤ポート造設部に発赤と疼痛
⑥白血球11,000(好中球84%)・CRP 12mg/dL
⑦心エコー検査で中等度の僧帽弁逆流
⑧疣贅は認めない
⑨グラム陽性のクラスター様に集簇する球菌が検出
☞③⑥から細菌感染を疑うが、②⑤よりカテーテル関連血流感染と考えられる。④は⑦で説明される。⑧の記載だけで感染性心内膜炎〈IE〉を除外してはならない、という事実は頻出。1問目では⑨の正体が問われている。

【選択肢考察】
a ウェルシュ菌。集団食中毒やガス壊疽の原因として知られる。
b 腸球菌。IEの原因となりうるが、亜急性の経過をとることが多い。
c インフルエンザ桿菌。グラム陰性菌であるため、⑨に矛盾する。
d 正しい。黄色ブドウ球菌は急性の経過をとるIEの原因となりやすい。
e レンサ球菌。IEの原因となるが、亜急性の経過をとることが多い。また、クラスター状ではなく、直鎖状に配列する。

正答率:98%

テーマ:【長文1/3】カテーテル関連血流感染症の原因微生物

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