116F58

73歳の女性。2か月前から腰痛に対し自宅近くの診療所でNSAIDの処方を受けていたが軽快しなかった。血液検査で高蛋白血症を認めたため紹介受診した。腰痛のため、体動と自力歩行が困難となっている。身長158cm、体重48kg(2か月で3kg減少)。体温36.5℃。脈拍84/分、整。血圧138/86mmHg。眼瞼結膜は貧血様である。血液所見:赤血球245万、Hb 8.2g/dL、Ht 23%、白血球2,800、血小板15万。血液生化学所見:総蛋白10.0g/dL、アルブミン3.3g/dL、IgG 3,800mg/dL(基準値960~1,960)、IgA 12mg/dL(基準110~410)、IgM 11mg/dL(基準65~350)、総ビリルビン0.4mg/dL、AST 12U/L、AST 14U/L、LD 158U/L(基準120~245)、尿素窒素12mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、尿酸5.9mg/dL、Na 136mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 101mEq/L、Ca 12.2mg/dL。免疫血清学所見:CRP 0.1mg/dL。蛋白分画写真を別に示す。

現時点でまず考慮すべき治療はどれか。3つ選べ

G-CSF投与
オピオイド投与
アルブミン製剤投与
生理食塩水の大量輸液
ビスホスホネート製剤投与

解答: b,d,e

116F58の解説

【プロセス】
①高齢女性
②腰痛のため、体動と自力歩行が困難
③高蛋白血症(総蛋白10.0g/dL)
④体重減少
⑤眼瞼結膜は貧血様
⑥汎血球減少
⑦アルブミン低下
⑧IgG高値だがIgAとIgMは抑制
⑨Ca高値
⑩蛋白分画写真にてγ分画にMピーク
☞①②④⑤あたりからは悪性腫瘍の腰椎転移なども疑われるが、その他の所見が合致しない。③にもかかわらず、健常人で最多となるはずのアルブミンが低下していること(⑦)、M蛋白が出現しており、IgG以外の免疫グロブリンが抑制されていること(⑧⑩)、骨溶解によると思われる⑨があること、などから多発性骨髄腫〈MM〉が考えやすい。MMでは正常造血の場が奪われることで複数系統の血球減少を認めることが多く、⑥も合致する。

【選択肢考察】
a 無顆粒球症の治療である。
b 正しい。②より、疼痛が日常生活に大きな支障を与えていることが読み取れる。疼痛緩和にオピオイド導入を考慮したい。
c 確かにMMでは低アルブミン血症を認める。しかし対症療法にすぎないため、アルブミン補充をすればMMの病状が改善するか、というとそうではない。現時点で特に低アルブミン血症によると思われる症状(浮腫など)がみられていない以上、アルブミン製剤を補充する必要はない。
d 正しい。高カルシウム血症への対策として、生理食塩水の大量輸液を行う。
e 正しい。高カルシウム血症への対策として、骨吸収抑制を狙いビスホスホネート製剤を投与する。

正答率:87%

テーマ:多発性骨髄腫〈MM〉の治療

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