116F59

次の文を読み、以下の問いに答えよ。

42歳の男性。工場の爆発事故で受傷し、強い息苦しさのため救急車で搬入された。
現病歴:工場で爆発事故が発生して受傷し、救急車で搬入された。崩落した機器に右下肢が挟まれた。受傷から1時間で救出され、病院に到着した。
既往歴:生来健康であった。
生活歴:喫煙は40本/日を22年間。飲酒は日本酒2合/日を22年間。
家族歴:父親が高血圧症で治療中である。
現 症:意識レベルはJCS II-10。身長174cm、体重78kg。体温37.2℃。心拍数136/分、整。血圧80/60mmHg。呼吸数32/分。SpO2 94%(リザーバー付マスク10L/分 酸素投与下)。頭髪と鼻毛は焼失している。眼瞼結膜は蒼白であり、眼球結膜に異常を認めない。口腔内と咽頭の粘膜は煤が付着し、浮腫状である。嗄声がみられる。頸静脈の怒張はない。右上腕部と右大腿部の変形がみられる。右大腿部開放創からの活動性出血が著しかったため、病院前救護においてタニケットを使用した止血が行われ、すでに止血している。心音に異常を認めない。呼吸音に左右差を認めないがwheezesを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
検査所見:動脈血ガス分析(リザーバー付マスク10L/分 酸素投与下):pH 7.30、PaCO2 30Torr、PaO2 84Torr、HCO3- 18mEq/L。血中一酸化ヘモグロビン濃度15%(基準1以下)。胸部エックス線写真で両側にびまん性浸潤影がみられる。骨盤エックス線写真に異常を認めない。大腿部および上腕部エックス線写真で右大腿骨骨折と右上腕骨骨折を認める。
写真(①~⑤)を別に示す。

この患者の気道確保で用いる器具はどれか。

解答: d

116F59の解説

【プロセス】
①工場の爆発事故で受傷
②頭髪と鼻毛は焼失
③血圧80/60mmHg・眼瞼結膜は蒼白
④口腔内と咽頭の粘膜は煤が付着し、浮腫状・嗄声あり
⑤wheezesを聴取
⑥血中一酸化ヘモグロビン濃度高値
⑦胸部エックス線写真で両側にびまん性浸潤影
⑧エックス線写真で右大腿骨骨折と右上腕骨骨折
☞①②より爆傷で熱傷を負ったことが分かる。④は気道熱傷を疑う所見であり、⑤からは気道狭窄も読み取れる。⑦より障害は下気道まで至っているようだ。また⑥から、爆発により発生した一酸化炭素〈CO〉の吸引により、一酸化炭素中毒に至っている。⑧からは足の損傷もみられ、これによる出血によって出血性ショックと貧血状態(③)を呈している。

【選択肢考察】
a 気管切開用カニューレ。現時点で優先されるのは気管切開ではなく気管挿管なので不適切。
b 経鼻エアウェイ。喉頭以下まで通すことができず、本患者の対処には不十分。
c 経口エアウェイ。喉頭以下まで通すことができず、本患者の対処には不十分。
d 正しい。気管挿管チューブ。この患者の気道確保には気管挿管が第一選択となる。
e 輪状甲状間膜の切開時に使用するチューブ。気管挿管が困難な超緊急時に用いられるが、現状は気管挿管が試行可能と思われるため、不適切。

正答率:94%

テーマ:【長文1/3】気道確保で用いる器具

フォーラムへ投稿

関連トピック

なし