116F55

76歳の男性。呼吸困難のため救急車で搬入された。8日前から発熱、乾性咳嗽が出現し、本日夕方から安静時でも呼吸が苦しいと訴えていた。意識がもうろうとしていることに妻が気づき救急車を要請した。妻は2週間前に咽頭痛、微熱を認めたが現在は改善している。喫煙歴は20~63歳まで20本/日。意識はJCS III-100。身長163cm、体重65kg。体温37.7℃。心拍数80/分、整。血圧104/64mmHg。呼吸数24/分。SpO2 93%(リザーバー付マスク10L/分 酸素投与下)。心音に異常を認めない。両側背部の下胸部にcoarse cracklesを聴取する。血液所見:赤血球470万、Hb 14.2g/dL、白血球4,800、血小板1.0万、PT-INR 2.4(基準0.9~1.1)。血液生化学所見:LD 629U/L(基準120~245)、尿素窒素23mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、血糖128mg/dL。CRP 10mg/dL。動脈血ガス分析(リザーバー付マスク10L/分 酸素投与下):pH 7.40、PaCO2 42Torr、PaO2 64Torr、HCO3- 24mEq/dL。心電図:正常洞調律。胸部エックス線写真(A)と胸部CT(B)とを別に示す。唾液を用いたSARS-CoV-2のPCR検査は陽性であった。

現時点で適切なのはどれか。2つ選べ

人工呼吸管理
抗線維化薬投与
気管支鏡下肺生検施行
副腎皮質ステロイド投与
シクロフォスファミド経口投与

解答: a,d

116F55の解説

【プロセス】
①高齢男性
②呼吸困難・意識障害(JCS III-100)
③SpO2 93%・PaO2 64Torr(リザーバー付マスク10L/分 酸素投与下)
④両側背部の下胸部にcoarse crackles
⑤血小板高度低下、PT-INR延長
⑥胸部エックス線写真にて両側下肺野のスリガラス陰影と浸潤影
⑦胸部CTにて両側性のスリガラス陰影と浸潤影
⑧唾液を用いたSARS-CoV-2のPCR検査は陽性
☞①にみられる、③④を伴った②であり、重症肺炎を疑う。⑥⑦は一般の細菌性肺炎にしては非典型的だ。究極は⑧に尽きるだろう。新型コロナウイルス感染症〈COVID-19〉の診断。⑤より播種性血管内凝固〈DIC〉に陥っており、かなり厳しい状況だ。

【選択肢考察】
a 正しい。③より、リザーバー付マスクによる酸素投与でも低酸素血症に対処しきれていないことが分かる。ゆえに人工呼吸管理導入が必要となる。
b 特発性肺線維症に有効。
c すでに新型コロナウイルス感染症の診断はついており、生検する必要はない。さらに本症例ではDICを呈しており、生検後の出血が止まらなくなる危険性もあるため★禁忌★。
d 正しい。新型コロナウイルス感染症に対しては副腎皮質ステロイドの投与が有効。
e 免疫抑制薬。新型コロナウイルス感染症には副腎皮質ステロイドやJAK阻害薬といった免疫抑制・調節薬が用いられるも、シクロフォスファミドは使われない。

正答率:70%

テーマ:新型コロナウイルス感染症の治療・対応

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