116D50

77歳の女性。食欲不振、嘔吐、下痢を主訴に来院した。20年前から関節リウマチで治療中であった。2週間前から食欲不振と倦怠感を自覚し、1週間前から口腔粘膜にびらんが出現した。3日前までメトトレキサートを継続していたが、その後嘔吐・下痢が出現したため救急外来を受診した。意識は清明。身長145cm、体重40kg。体温37.4℃。脈拍108/分、整。血圧120/70mmHg。呼吸数20/分。SpO2 99%(room air)。口腔粘膜にびらんを認める。表在リンパ節腫大を認めない。心音と呼吸音に異常を認めない。両手関節に軽度の腫脹と変形を認める。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球297万、Hb 10.0g/dL、Ht 32%、網赤血球0.1%、白血球1,800(好中球52%、好酸球12%、単球1%、リンパ球35%)、血小板8.0万、フィブリノゲン460mg/dL(基準186~355)、PT-INR 1.0(基準0.9~1.1)、活性化トロンボプラスチン時間〈APTT〉27.3秒(基準対照32.2)、Dダイマー6.4μg/mL(基準1.0以下)。血液生化学所見:総蛋白6.3g/dL、アルブミン3.0g/dL、AST 25U/L、ALT 82U/L、LD 280U/L(基準120~245)、尿素窒素33mg/dL、クレアチニン1.2mg/dL。CRP 16mg/dL。胸部エックス線写真に異常を認めない。メトトレキサートを中止し、血液培養の検体採取後にカルバペネム系抗菌薬の投与を開始した。

次に投与する薬剤として適切なのはどれか。

ST合剤
抗真菌薬
活性型葉酸
ビタミンB12
副腎皮質ステロイド

解答: c

116D50の解説

【プロセス】
①20年前から関節リウマチで治療中
②食欲不振と倦怠感
③口腔粘膜にびらん
④3日前までメトトレキサートを継続
⑤汎血球減少
⑥メトトレキサートを中止し、血液培養の検体採取後にカルバペネム系抗菌薬を開始
☞①への標準的治療薬であるメトトレキサートであるが、その作用は葉酸阻害による。そのため、本症例のような腎機能が低下した小柄な高齢者では中毒症状をきたしやすい。具体的な中毒症状が③や⑤(骨髄抑制)である。②も中毒症状の1つなのか、それともたまたま感冒を患い②を呈し、それが契機となり脱水等の負荷が身体にかかり、メトトレキサート中毒をきたしやすくなったのか、は何とも言えない。④⑥からもメトトレキサートが原因と考えられ、⑤(骨髄抑制)も相まって出現した細菌感染への対処はすでに行われていると分かる。

【選択肢考察】
a ニューモシスチス肺炎の治療薬。
b 現時点での真菌感染は本文から読み取れない。
c 正しい。上記の通り、葉酸作用が低下してしまっている状態と考えられる。そのため、メトトレキサート中毒には活性型葉酸の投与が有効となる。
d ビタミンB12欠乏では葉酸欠乏時と同じく巨赤芽球性貧血を呈する。が、メトトレキサート中毒でビタミンB12欠乏は起こらないため、本患者には不要。
e 関節リウマチに対しては有効であるが、現在感染症もあり、安易に投与すると感染増悪をきたす恐れがある。

正答率:49%

テーマ:メトトレキサート中毒に対して投与する薬剤

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