116D49

77歳の女性。意識障害のため救急車で搬入された。介護老人保健施設に入所中である。3日前から物忘れがひどくなり、自分がどこにいるかも分からなくなっていた。施設職員からの情報では、1年前まで自宅近くの医療機関で非ホジキンリンパ腫の治療が行われ、「治癒した」と言われていたが、施設入所後は施設から遠いので通院していないとのことであった。呼びかけには反応するが、傾眠状態である。尿失禁はない。体温37.2℃。心拍数96/分、整。血圧96/62mmHg。呼吸数14/分。SpO2 96%(room air)。血液所見:赤血球398万、Hb 12.5g/dL、Ht 40%、白血球6,300、血小板16万、PT-INR 2.1(基準0.9~1.1)、FDP 25μg/mL(基準10以下)。血液生化学所見:総蛋白6.4g/dL、アルブミン3.5g/dL、総ビリルビン3.2mg/dL、直接ビリルビン1.8mg/dL、AST 3,956U/L、ALT 2,824U/L、LD 986U/L(基準120~245)、ALP 158U/L(基準38~113)、γ-GT 686U/L(基準8~50)、アミラーゼ130U/L(基準37~160)、尿素窒素13mg/dL、クレアチニン1.0mg/dL、血糖121mg/dL、Na 134mEq/L、K 3.8mEq/L、Ca 9.0mg/dL、P 4.1mg/dL、アンモニア186μg/dL(基準18~48)。免疫血清学所見:HBs抗原陽性、HBV-DNA陽性、HCV抗体陰性。頭部単純CTで明らかな異常を認めない。非ホジキンリンパ腫治療前のB型肝炎ウイルスマーカーはHBs抗原陰性、HBs抗体陽性、HBc抗体陽性であった。

考えられる疾患はどれか。

原発性硬化性胆管炎
被包化膵臓壊死
急性膵炎
急性肝炎
劇症肝炎

解答: e

116D49の解説

【プロセス】
①意識障害(傾眠状態→肝性昏睡II度 ※III度なら"嗜"眠傾向)
②1年前まで自宅近くの医療機関で非ホジキンリンパ腫の治療
③PT-INR 2.1
④AST 3,956U/L、ALT 2,824U/L
⑤HBs抗原陽性、HBV-DNA陽性
⑥非ホジキンリンパ腫治療前はHBs抗原陰性、HBs抗体陽性、HBc抗体陽性
☞⑥より、B型肝炎のキャリアであったことが分かる。⑤でHBs抗原が陽性化していることから、②による免疫抑制にて、B型肝炎が再活性化したと読み取ろう。④からは肝臓への大きなダメージを疑うが、①(肝性昏睡II度)と③(PT-INR≧1.5)より劇症肝炎の診断となる。

【選択肢考察】
a AST, ALTといった肝逸脱酵素より、ALPやγ-GTといった胆道系酵素の上昇が優位となる。
b アミラーゼは基準値内であり、膵臓の壊死は否定的。
c アミラーゼは基準値内であり、急性膵炎は否定的。
d 現状、劇症肝炎の診断基準を満たしており、他に劇症肝炎という選択肢がある以上、本選択肢は正解とならない。
e 正しい。上記の通り。

正答率:93%

テーマ:劇症肝炎の診断

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