116D47

5か月の男児。数日前から便秘があり、今朝から哺乳量が低下したため母親に連れられて来院した。周産期に異常なく、4か月健康診査までの成長、発達は良好であった。完全母乳栄養だが、最近になり蜂蜜を与えている。来院時、視線は合うものの表情に乏しく、眼瞼下垂と瞳孔散大を認め、対光反射は両側で遅延している。頸部の姿勢保持が困難で、四肢の腱反射は消失している。

最も考えられる疾患はどれか。

脳性麻痺
重症筋無力症
ボツリヌス症
先天性ミオパチー
Werdnig-Hoffmann病

解答: c

116D47の解説

【プロセス】
①5か月の男児
②最近になり蜂蜜を与えている
③便秘
④哺乳量が低下
⑤表情に乏しい
⑥眼瞼下垂と瞳孔散大
⑦対光反射は両側で遅延
⑧頸部の姿勢保持が困難
⑨四肢の腱反射は消失
☞①②より、乳児ボツリヌス症が考えやすい。成人であれば問題ないのだが、腸内細菌叢の発達が未熟である乳児に蜂蜜を与えると、ボツリヌス菌が腸管内で増殖し、毒素を産生してしまう。そのため、乳児への蜂蜜投与は控えることが望ましい。筋力低下(④⑤⑧⑨)と副交感神経障害(③⑥⑦)はボツリヌス中毒の症候に合致する。

【選択肢考察】
a 受胎から生後4週までに何らかの原因で受けた脳の損傷によって引き起こされる運動機能の障害を指す症候群。4か月健康診査までは成長・発達とも良好だったとのことで考えにくい。
b 筋力低下はみるも、夕方に強くなるなど日内変動がある。また、瞳孔異常や対光反射の遅延を認める例は稀である。
c 正しい。上記の通り。
d 「先天性」というネーミング通り、生下時から症状がみられる。4か月健康診査までは成長・発達とも良好だったとのことで考えにくい。
e 脊髄前角細胞の進行性変性・消失をきたす病態(脊髄性筋萎縮症〈SMA〉のI型)。自律神経は保たれるため、便秘など副交感神経障害が合致しない。

正答率:99%

テーマ:ボツリヌス症の診断

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