116D45

69歳の女性。IgA腎症の管理について相談するために来院した。42歳でIgA腎症と診断され、それ以来自宅近くの診療所を定期受診している。50歳から高血圧を指摘されてカルシウム拮抗薬を服用している。定期的に栄養指導を受けており、最近の食事調査では1日塩分摂取量5.5g、1日蛋白摂取量35gであった。喫煙歴はない。週に2回、赤ワイン2杯/日を飲酒している。週に3回、1回約30分間のプール内歩行を続けている。身長160cm、体重55kg。脈拍72/分、整。血圧140/70mmHg。胸腹部に異常を認めない。両下腿に浮腫を認めない。尿所見:蛋白2+、潜血2+、尿蛋白/クレアチニン比は1.2g/gCr(基準0.15未満)、尿沈渣に赤血球8~12/HPF、白血球1~2/HPF、顆粒円柱を少数認める。血液生化学所見:総蛋白6.0g/dL、アルブミン4.0g/dL、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、eGFR 62.8mL/分/1.73m2、Na 142mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 100mEq/L。

本患者の腎機能悪化を抑制するためにまずすべきなのはどれか。

禁酒
運動制限
利尿薬の追加
蛋白摂取量の倍化
レニン・アンジオテンシン系抑制薬の追加

解答: e

116D45の解説

【プロセス】
①42歳でIgA腎症と診断
②最近の食事調査では1日塩分摂取量5.5g、1日蛋白摂取量35g
③週に2回、赤ワイン2杯/日
④週に3回、1回約30分間のプール内歩行
⑤血圧140/70mmHg
⑥胸腹部に異常なし・両下腿に浮腫を認めない
⑦尿所見:蛋白2+、潜血2+
⑧eGFR 62.8mL/分/1.73m2
☞①にあるIgA腎症の状態は、⑧より慢性腎臓病〈CKD〉のステージ2(G2)と分かる。⑤⑦より、腎機能悪化のため腎保護作用のある薬剤の追加が望まれる。

【選択肢考察】
a ワイン1杯は注ぎ方にもよるが、通常100mL程度。度数もものによりマチマチであるが、簡便のため10%とすると、ワイン2杯は純アルコールにして20g(ちょうど1日あたりの適度な飲酒量)となる。ましてや週に2回とのことで、③は適正範囲内。
b 69歳の女性として④は適度であろう。制限する必要はない。
c ⑥より胸腹水や浮腫はなさそうだ。利尿薬を追加する必要はない。
d ②より1日蛋白摂取量は35g。CKDにて蛋白制限がかかるのはステージ3a以降であるため、本患者は標準体重のkgをg表記に変えた程度を1日に摂取することが推奨されている。今、標準体重は1.6×1.6×22=56.32kgであるため、約56g/日の蛋白質摂取が望ましい。ゆえに35gはやや少なめ。とはいえ、本選択肢にあるように「倍化」してしまうと70gと多すぎる。現在ステージ2であり、近い将来ステージ3に突入する可能性が高いことを考慮するに、少し少なめでもよいという出題者の意図なのかもしれない。むろん、筋力低下や総カロリー不足にならないよう、適宜蛋白質の摂取に関しても助言をしていくとよい。
e 正しい。腎保護作用のある降圧薬であり、本患者の腎機能悪化抑制に最適である。

正答率:82%

テーマ:IgA腎症の管理において腎機能悪化を抑制すべく行うこと

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