116D44

53歳の女性。皮疹と発熱を主訴に来院した。1か月前から手指に皮疹が出現した。2週間前から38℃台の発熱があり、断続的に続いていたため受診した。体温37.8℃。脈拍92/分、整。血圧118/78mmHg。呼吸数18/分。SpO2 97%(room air)。口腔粘膜に異常を認めない。心音に異常を認めない。両側の背部にfine cracklesをわずかに聴取する。筋力低下を認めない。手指の皮疹を別に示す。後頸部から両上背部と両肘頭に紅斑を認める。尿所見に異常を認めない。血液所見:赤血球393万、Hb 11.7g/dL、Ht 35%、白血球5,400(桿状核好中球5%、分葉核好中球76%、好酸球1%、単球7%、リンパ球11%)、血小板31万。血液生化学所見:総蛋白7.1g/dL、アルブミン3.4g/dL、AST 31U/L、ALT 21U/L、LD 390U/L(基準120~245)、CK 75U/L(基準30~140)、クレアチニン0.6mg/dL。免疫血清学所見:CRP 0.8mg/dL、β-D-グルカン4.0pg/mL(基準10以下)、フェリチン875ng/mL(基準20~120)、KL-6 520U/mL(基準500未満)、サーファクタントプロテインD〈SP-D〉115ng/mL(基準110未満)、抗核抗体40倍(基準20以下)、抗Mi-2抗体陰性、抗MDA5抗体陽性、抗TIF1-γ抗体陰性。

この患者で最も注意すべき合併症はどれか。

心不全
悪性腫瘍
嚥下障害
間質性肺炎
肺高血圧症

解答: d

116D44の解説

【プロセス】
①中年女性
②手指に皮疹(画像にて爪周囲紅斑、Gottron徴候、逆Gottron徴候)
③2週間前から38℃台の発熱
④両側の背部にfine cracklesをわずかに聴取
⑤筋力低下を認めない・CK正常
⑥後頸部から両上背部と両肘頭に紅斑
⑦フェリチン高値
⑧KL-6・SP-D上昇
⑨抗核抗体陽性
⑩抗MDA5抗体陽性
☞①③⑨から膠原病を考える。②⑥⑩からは皮膚筋炎が考えやすい。「筋炎」というネーミングの割に⑤なのは若干違和感を覚えるかもしれないが、無筋症性皮膚筋炎〈ADM〉という病態があり、臨床上は筋への影響を認めないタイプの皮膚筋炎があることを押さえておこう。⑩の皮膚筋炎には急速に進行する難治性間質性肺炎を伴うことが知られており、これで④⑧の説明もつく。⑦であるが、急速進行性間質性肺炎を呈するADMにおいて血清フェリチンは予後予測因子とされている。

【選択肢考察】
a 心筋障害を呈するタイプの皮膚筋炎で問題となる。
b 抗 TIF1-γ抗体陽性例で問題となる。
c 筋力低下により、嚥下筋が障害された場合に問題となる。本症例はADMであるため、筋力低下をみない。
d 正しい。上記の通り。
e 心筋障害から続発性に肺高血圧症がみられる場合があるも、他選択肢「心不全」と同じ理由から正解にはならない。

正答率:90%

テーマ:無筋症性皮膚筋炎〈ADM〉(抗MDA5抗体陽性)で注意すべき合併症

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