116D42

48歳の女性。両下肢筋力低下を主訴に来院した。1年前に右眼視力低下があり、眼科で加療されて症状は改善した。3日前から両下肢の脱力感としびれ感を自覚していた。これらの症状が徐々に悪化し、本日起床時に起き上がるのが困難となったため、夫が救急車を要請し入院した。意識は清明。血圧112/64mmHg。脈拍80/分、整。胸腹部に異常を認めない。神経診察では脳神経領域に異常を認めない。上肢には麻痺はなく、腱反射は正常である。下肢筋力は両側の近位筋、遠位筋ともに徒手筋力テストで2程度に低下している。下肢腱反射は亢進し、Babinski徴候は両側陽性である。胸骨下縁から下で温痛覚の低下がみられる。血液所見、血液生化学所見に異常を認めない。脳脊髄液所見は細胞数69(多核球60、単核球9)/mm3(基準0~2)、蛋白62mg/dL(基準15~45)、糖62mg/dL。胸椎MRIのT2強調矢状断像(A)と病変部の水平断像(B)を別に示す。

診断に有用なのはどれか。

MPO-ANCA
抗アクアポリン4抗体
抗ガングリオシド抗体
抗筋特異的チロシンキナーゼ抗体〈抗MuSK抗体〉
抗アミノアシルt-RNA合成酵素抗体〈抗ARS抗体〉

解答: b

116D42の解説

【プロセス】
①両下肢筋力低下
②1年前に右眼視力低下
③下肢腱反射は亢進し、Babinski徴候は両側陽性
④胸骨下縁から下で温痛覚の低下
⑤脳脊髄液所見にて細胞数は多核球優位に増加・タンパクも軽度上昇
⑥胸椎MRIのT2強調矢状断像にて脊髄内に少なくともT3〜T6(4椎体)にわたる高信号域
⑦病変部の胸椎MRIのT2強調水平断像にて脊髄横断面の高信号域
☞③より①は上位運動ニューロン障害によると分かる。また、②④より時間的・空間的多発も読み取れる。⑥⑦は脱髄巣であろう。3椎体以上に及んでおり、⑤も合わせ、多発性硬化症〈MS〉よりは視神経脊髄炎〈NMO〉が考えやすい。

【選択肢考察】
a 顕微鏡的多発血管炎〈MPA〉や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症〈EGPA〉〈アレルギー性肉芽腫性血管炎〉〈Churg-Strauss症候群〉で陽性となる。
b 正しい。NMOで陽性となる。
c Guillain-Barré症候群〈GBS〉やFisher症候群、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎〈CIDP〉で陽性となる。
d 重症筋無力症〈MG〉にて陽性となる。
e 抗ARS抗体症候群(筋炎や間質性肺炎をみる)にて陽性となる。

正答率:97%

テーマ:視神経脊髄炎〈NMO〉の診断に有用な抗体

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