116D40

53歳の男性。3年前から喘息のコントロールが不良でしばしば増悪を起こし、肺炎を繰り返すようになった。2週間前から近くの医療機関で肺炎と診断され治療中であったが、抗菌薬への反応が悪いとのことで紹介され来院した。2歳から気管支喘息として治療を受けている。身長168cm、体重64kg。体温36.4℃。脈拍68/分、整。血圧118/68mmHg。呼吸音は両側全肺野でwheezesを聴取する。入院時血液所見:赤血球465万、Hb 12.8g/dL、Ht 39%、白血球13,100(分葉核好中球51%、好酸球27%、好塩基球2%、リンパ球20%)、血小板27万。血液生化学所見:総ビリルビン0.6mg/dL、AST 22U/L、ALT 27U/L、LD 150U/L(基準120~245)、ALP 46U/L(基準38~113)、γ-GT 36U/L(基準8~50)、尿素窒素8.5mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、IgE 2,540IU/mL。免疫血清学所見:CRP 0.2mg/dL、抗アスペルギルス沈降抗体陽性、β-D-グルカン120pg/mL(基準10以下)、喀痰培養でAspergillus fumigatusが検出された。

この患者に対する治療として適切なのはどれか。

シクロスポリン
セフェム系抗菌薬
高用量吸入ステロイド
経口副腎皮質ステロイド
アスペルギルス減感作療法

解答: d

116D40の解説

【プロセス】
①2歳から気管支喘息
②肺炎を繰り返す(抗菌薬への反応が悪い)
③好酸球27%・IgE 2,540IU/mL
④抗アスペルギルス沈降抗体陽性
⑤β-D-グルカン高値
⑥喀痰培養でAspergillus fumigatusが検出
☞①③よりI型アレルギーの背景がありそうだ。②の記載からも、今回の肺炎は細菌感染とは考えにくい。④〜⑥からアスペルギルスが原因と分かり、③と合わせて考えるにアレルギー性気管支肺アスペルギルス症〈ABPA〉が導かれる。

【選択肢考察】
a 免疫抑制薬である。
b 抗菌薬である。
c 気管支喘息に用いられる。紛らわしいが、ABPAに対しては全身投与する必要があるため、吸入はしない。
d 正しい。副腎皮質ステロイドの全身投与が有効となる。
e 減感作療法はアレルギー性疾患に対する唯一の根治療法であるが、長期間を要する。肺炎で苦しんでいる現時点で導入するものではない。なお、116回出題時点でアスペルギルス減感作療法は日本国内で行われていない。

正答率:78%

テーマ:アレルギー性気管支肺アスペルギルス症〈ABPA〉の治療

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