116D21

67歳の男性。繰り返す発熱を主訴に来院した。60歳時に健診で心雑音を指摘された。精査の結果、中等度の大動脈弁逆流症を指摘され、定期的にフォローアップされていた。7週間前から38℃前後の発熱が出現し、市販の解熱薬の内服により一時的に解熱するが、再度発熱するというエピソードを繰り返すため来院した。意識は清明。体温37.6℃。脈拍92/分、整。血圧116/54mmHg。呼吸数20/分。SpO2 94%(room air)。血液所見:赤血球452万、Hb 12.4g/dL、Ht 36%、白血球14,800、(桿状核好中球55%、分葉核好中球25%、好酸球1%、好塩基球1%、単球5%、リンパ球13%)、血小板15万。血液生化学所見:AST 38U/L、ALT 36U/L、尿素窒素30mg/dL、クレアチニン1.3mg/dL、尿酸7.1mg/dL、Na 135mEq/L、K 4.6mEq/L、Cl 102mEq/L。CRP 14mg/dL。心エコー検査では大動脈弁逆流症と弁への疣贅付着を認めた。抗菌薬投与を開始した。

この患者の治療経過中に緊急大動脈弁置換術の適応とならないのはどれか。

弁穿孔の合併
弁周囲膿瘍の形成
出血性脳梗塞を併発後の昏睡状態
疣贅が増大し塞栓症がみられる場合
内科的にコントロールが困難な心不全の出現

解答: c

116D21の解説

【プロセス】
①繰り返す発熱
②7年前に大動脈弁逆流症を指摘(定期的にフォローアップ)
③心エコー検査では大動脈弁逆流症と弁への疣贅付着
☞③より感染性心内膜炎〈IE〉である。②による脆弱な弁構造がIEの温床になった可能性が高い。①も典型的な症候である。感染性心内膜炎〈IE〉の手術適応となる例としては内科的にコントロールが困難な心不全、膿瘍や瘻孔(穿孔)を形成した例、巨大または増大する疣贅の存在、などが挙げられる。選択肢のなかで適応とならないのは「出血性脳梗塞を併発後の昏睡状態」。昏睡状態でただでさえ手術が難しい上、IEの手術には大量のヘパリンを使うため、出血性脳梗塞が増悪する危険性が高い。

正答率:89%

テーマ:感染性心内膜炎〈IE〉に対する緊急大動脈弁置換術の適応

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