116D17

外見は40歳前後にみえる男性。路上にうずくまっているところを警察官に保護されたが、「自分が誰だかわからない」と言うため、警察官に伴われて来院した。身元がわかるような所持品はなかった。会話は可能で、関西弁を話したが、関西地方に住んだ記憶はないという。外傷はなく、血液検査、脳画像検査、脳波などの身体的な精査では異常はなく、保護されてからの記憶は保持されていた。

この患者でみられる可能性が最も高い特徴はどれか。

替え玉妄想がみられる。
切符を買うなどの一般的な行動はできる。
記憶がないことについて深刻に悩んでいる。
抗精神病薬を投与する必要がある。
アルツハイマー型認知症の初期症状である。

解答: b

116D17の解説

【プロセス】
①路上にうずくまっているところを警察官に保護
②「自分が誰だかわからない」
③会話は可能で、関西弁を話したが、関西地方に住んだ記憶はない
④外傷はなく、精査で異常なし
⑤保護されてからの記憶は保持
☞①〜③より全生活史健忘が考えやすい。⑤より逆行性健忘がみられており、これも全生活史健忘に矛盾しない。⑤からは健忘のトリガーとなるイベントは見いだせず、解離性障害による健忘も考えられる。

【選択肢考察】
a 家族が他人にすり替わっている、といった訴えをする妄想。認知症や統合失調症でみられる。
b 正しい。全生活史健忘では言語や習慣、社会的・一般常識は覚えていることが多い。
c 他人に指摘されるまでは記憶障害について自覚がなく、深刻な悩みを抱えていないが通常である。
d 全生活史健忘に対して薬物治療は無効。
e アルツハイマー型認知症では遠隔記憶は保たれ、むしろ直近のことを覚えていない。

正答率:99%

テーマ:全生活史健忘の特徴

フォーラムへ投稿

関連トピック

なし