116C72

次の文を読み、以下の問いに答えよ。

87歳の女性。両側下腿浮腫を主訴に夫と息子夫婦とともに来院した。
現病歴:約半年前から両側下腿浮腫が出現し、自宅近くの医療機関で少量の利尿薬を処方されていた。3か月前から下腿浮腫の悪化のため歩きにくくなり、労作時の息切れも感じるようになった。2週間前からは食欲低下も著しくなったため受診した。
既往歴:下腿浮腫に対して少量のループ利尿薬を処方されている。
生活歴:夫(94歳)と2人暮らし。喫煙歴と飲酒歴はない。
家族歴:妹が悪性リンパ腫であった。
現 症:意識は清明。身長153cm、体重45kg。体温36.7℃。脈拍72/分、整。血圧152/70mmHg。呼吸数16/分。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜は貧血様である。頸静脈の怒張を認める。心音はLevine 2/6の全収縮期雑音を認める。呼吸音に異常を認めない。腹部は肋骨弓下に肝臓を1cm触知する。下腿浮腫を両側に認めるが熱感や圧痛はなく、圧迫により生じる圧痕は圧迫を解除すると戻る。四肢に明らかな麻痺を認めない。
検査所見:尿所見:蛋白(−)、糖(−)、潜血(−)。血液所見:赤血球350万、Hb 8.1g/dL、Ht 27%、白血球7,800。血液生化学所見:総蛋白5.1g/dL、アルブミン2.5g/dL、AST 40U/L、ALT 50U/L、LD 282U/L(基準120~245)、CK 70U/L(基準30~140)、尿素窒素19mg/dL、クレアチニン1.0mg/dL、血糖93mg/dL、HbA1c 5.6%(基準4.6~6.2)、総コレステロール160mg/dL、トリグリセリド166mg/dL、Na 142mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 108mEq/L、Ca 7.5mg/dL、Fe 10μg/dL、TSH 3.6(基準0.2~4.0)、FT3 2.4(基準2.3~4.3)、FT4 0.9(基準0.8~2.2)、BNP 110pg/mL(基準18.4以下)。CRP 0.2mg/dL。12誘導心電図で完全右脚ブロックを認める。胸部エックス線写真で心胸郭比50%、肺血管影の増強はなく、両側の肋骨横隔膜角の鈍化を認める。

浮腫の原因で可能性が高いのはどれか。2つ選べ

腎性
心性
炎症性
内分泌性
低蛋白性

解答: b,e

116C72の解説

【プロセス】
①両側下腿浮腫
②食欲低下
③眼瞼結膜は貧血様(Hb 8.1g/dL)
④頸静脈の怒張を認める
⑤心音は全収縮期雑音
⑥肋骨弓下に肝臓を1cm触知
⑦浮腫部に熱感や圧痛なし
⑧圧迫により生じる圧痕は圧迫を解除すると戻る
⑨アルブミン2.5g/dL
⑩Fe低下
⑪12誘導心電図で完全右脚ブロック
⑫両側の肋骨横隔膜角の鈍化(胸水の存在)
☞①④⑥⑫は右心不全徴候である。右心に負荷がかかった結果、⑪がみられている可能性が高い。③で貧血がみられており、⑩より鉄欠乏性貧血と思われる。⑤はその代償であろう。②からは消化管出血が疑われるが、それは2問目以降で紐解いていくこととなる。⑧の記載は何とも回りくどいが、「圧迫により生じる圧痕」という前半部分が要点と言える。つまりは圧痕性浮腫なのである(もし非圧痕性浮腫〈non-pitting edema〉であれば、圧迫によりそもそも圧痕を生じない)。

【選択肢考察】
a 尿素窒素19mg/dL、クレアチニン1.0mg/dLと正常値であり、腎性は考えにくい。
b 正しい。右心不全による浮腫が考えやすい。
c ⑦より否定的。
d 非圧痕性浮腫となる。
e 正しい。⑨より、低蛋白血症も浮腫の原因となっている可能性が高い。

正答率:81%

テーマ:【長文1/3】浮腫の原因

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