116C55

57歳の男性。腎機能低下を主訴に来院した。35歳でIgA腎症と診断され、自宅近くの診療所を定期受診していた。腎機能が次第に悪化し、腎代替療法の準備が必要と判断されて受診した。IgA腎症の診断時に高血圧症を指摘されて降圧薬を、50歳からは2型糖尿病を指摘されて経口血糖降下薬を服用中である。身長170cm、体重80kg。脈拍72/分、整。血圧136/80mmHg。胸腹部に異常はない。両下腿に軽度の浮腫を認める。尿所見:蛋白2+、潜血2+。血液所見:赤血球325万、Hb 9.7g/dL、Ht 29%、白血球5,700、血小板20万。血液生化学所見:尿素窒素60mg/dL、クレアチニン3.3mg/dL、eGFR 16.5mL/分/1.73m2、HbA1c 6.4%(基準4.6~6.2)、Na 142mEq/L、K 5.0mEq/L、Cl 102mEq/L。血液型はA型、RhD(+)。腎代替療法の説明の際に、患者は妻からの腎移植を希望していることがわかった。妻は55歳で生来健康であり、血液型はO型、RhD(+)である。妻は患者への腎臓提供に同意している。

この患者の腎移植に関する説明で適切なのはどれか。

患者に糖尿病があるので移植を受けられない。
血液型が違うので妻からの移植は受けられない。
移植を受けるために患者は退職する必要がある。
透析を開始した後でなければ移植を受けられない。
術前検査で患者に癌が見つかれば移植を受けられない。

解答: e

116C55の解説

【プロセス】
①35歳でIgA腎症と診断
②腎機能が次第に悪化し、腎代替療法の準備が必要
③妻は患者への腎臓提供に同意
☞腎移植についてのルールを問うた出題。

【選択肢考察】
a 糖尿病患者だからといって移植ができなくなるわけではない。そもそも糖尿病性腎症がこれほど多い世の中で、そんなルールがあったら腎移植の適応が極めて限定的になってしまうだろう。
b 血液型が不適合であっても移植は可能である。
c 一時的な休職ならまだしも、退職までする必要はない。
d 透析開始前であっても、「近い将来に透析を導入する必要に迫られている保存期慢性腎不全」であれば移植を受けることができる。
e 正しい。生体腎移植レシピエント適応基準に「悪性腫瘍がないこと」という要件がある。

正答率:89%

テーマ:腎移植に関する説明

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