116C53

28歳の初妊婦(1妊0産)。妊娠36週、胎児発育不全を指摘され来院した。妊娠32週の妊婦健康診査で推定胎児体重が1,586g(−1.0SD)であった。妊娠34週の妊婦健康診査で1,776g(−1.5SD)であり胎児発育不全と診断されたため、かかりつけの産科診療所から紹介され受診した。母体合併症は認めなかった。胎児超音波検査で大横径〈BPD〉87mm(0.0SD)、腹囲〈AC〉25cm(−2.2SD)、大腿骨長〈FL〉64mm(−0.2SD)、推定胎児体重〈EFW〉1,904g(−2.1SD)であり、羊水指数〈AFI〉6cm、胎児形態異常は認めなかった。これまでの胎児計測の経過(A)と来院時の胎児心拍数陣痛図(B)とを別に示す。

胎児の病態について正しいのはどれか。

貧血になっている。
腎血流が増加している。
脳血流が増加している。
臍帯血流が障害されている。
アシデミア〈酸血症〉になっている。

解答: c

116C53の解説

【プロセス】
①妊娠36週
②胎児発育不全を指摘
③羊水指数〈AFI〉6cm
④これまでの胎児計測の経過では大横経と大腿骨長は問題なく、腹囲と推定胎児体重が−2SD程度まで低下
⑤胎児心拍数陣痛図は一過性頻脈(reactive所見)
☞①より妊娠末期のトラブルである。④より確かに②が裏付けされる。大横経が問題ないということは、脳血流は維持されている(すなわち不均衡型の胎児発育不全)と考えられる。⑤より胎児はひとまず元気そうだ。③について、AFIの基準値は5〜24。ゆえに下限ギリギリであり、尿を始めとする羊水の産生が低下気味であることが推定される。

【選択肢考察】
a 貧血であれば、胎児心拍数陣痛図にてサイヌソイダルパターンをみるはず。
b 上述の通り、AFIは下限ギリギリであり、腎血流(これが濾過されて尿、そして羊水となる)は低下気味と推定される。
c 正しい。上記の通り。
d 臍帯血流の障害があれば、胎児心拍数陣痛図にて徐脈がみられるはず。
e 厳密には胎児血採血をしないと何とも言えないが、少なくとも胎児心拍数陣痛図からアシデミア〈酸血症〉による所見(基線細変動消失や徐脈)は読み取れない。

正答率:61%

テーマ:胎児発育不全〈FGR〉を指摘された胎児の病態について

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