116A68

38歳の女性。腹痛のため来院した。1週間前から排便がなく、嘔吐や腹痛、腹部膨満感を自覚し徐々に増悪するため受診した。意識は清明。体温37.2℃。脈拍72/分、整。血圧118/62mmHg。呼吸数18/分。SpO2 97%(room air)。腹部は膨隆し、腸雑音は亢進している。直腸指診で直腸子宮窩〈Douglas窩〉に硬結を認めた。腹部エックス線単純写真の仰臥位像でハウストラを伴う拡張した腸管と、立位像で液面形成〈niveau〉を認めた。腹部CT検査で回腸から直腸までの腸管拡張と骨盤部に少量の腹水を認めた。上部消化管内視鏡検査で4型胃癌を認めた。嘔吐により食事がとれないため入院とし、末梢輸液を開始した。

今後行う対応として適切なのはどれか。2つ選べ

胃全摘術
胃瘻造設
嚥下訓練
経鼻胃管留置
中心静脈栄養

解答: d,e

116A68の解説

【プロセス】
①38歳の女性
②1週間前から排便なく、嘔吐や腹痛、腹部膨満感を自覚し徐々に増悪
③腹部は膨隆、腸雑音は亢進
④腹部エックス線でハウストラと液面形成〈niveau〉
⑤直腸指診で直腸子宮窩〈Douglas窩〉に硬結
⑥骨盤部に少量の腹水
⑦上部消化管内視鏡検査で4型胃癌
☞⑦ですでに診断はついている。4型胃癌は①のような若めの女性にみられやすい。②③④より腸閉塞が読み取れる。ではどうして腸閉塞してしまったのか。そのヒントは⑤⑥だ。4型胃癌が腹膜播種し、広範に広がってしまっているのだろう(⑥は癌性腹水と考えられる)。これにより、腸閉塞症状が前面に出ている。逆に言えば、腹膜播種して腸閉塞症状が出るまで、本体である4型胃癌は発見されなかったということだ。何とも恐ろしい。

【選択肢考察】
a 腹膜播種しており、ope適応はない。
b 腹膜播種による腸閉塞が問題となっているわけで、意味がない(胃瘻を造設し、胃に直接食べ物を入れても、結局腸管を通過できない)。
c 若めの女性であり、嚥下機能自体は正常なはずだ。訓練する必要はない。
d 正しい。減圧を狙う、腸閉塞への一般的な対処である。
e 正しい。食事がとれないため末梢輸液を開始しているが、末梢輸液のみで1日に必要な総カロリーを補うことは難しい。中心静脈栄養の利用を検討すべきだ。

正答率:62%

テーマ:腹膜播種した4型胃癌への対応

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