116A49

45歳の男性。労作時の息切れ、全身倦怠感を主訴に来院した。5年前からサイクリングで遠出をすると息切れを自覚していた。徐々により軽い労作で症状が出現するようになり、半年前からは15分程度の通勤でも息切れが出現し、駅の階段を一気に昇れないこともあった。会社の健診では、以前から心雑音を指摘されていたが精査は行っていない。家族歴に特記すべきことはない。意識は清明。体温36.0℃。脈拍88/分、整。血圧124/72mmHg。呼吸数16/分。SpO2 95%(room air)。呼吸音に異常を認めない。Levine 4/6の収縮期雑音を聴取する。心電図では左室高電位、心室期外収縮の3連発を認めた。心エコー検査では左室拡張末期径は60mm、左室駆出率は40%であり、大動脈弁は二尖弁と判断された。連続波ドプラ法による測定では大動脈弁最大血流速度は5.0m/秒であり、大動脈弁口面積は0.65cm2と推定された。

適切な対応はどれか。

大動脈弁置換術
植込み型除細動器の植込み
トレッドミル運動負荷心電図
治療せずに半年後に心エコー検査
ヒト心房利尿ペプチド〈hANP〉投与

解答: a

116A49の解説

【プロセス】
①5年前から息切れ
②以前から心雑音を指摘(収縮期雑音の存在)
③心電図では左室高電位、心室期外収縮の3連発
④心エコー検査では左室拡張末期径拡大、左室駆出率低下
⑤大動脈弁は二尖弁
⑥大動脈弁最大血流速度>4m/秒・大動脈弁口面積<1cm2
☞①〜④より何かしらの心疾患を背景に左室負荷がかかっていることが予想できる。⑤より大動脈弁狭窄症〈AS〉を考え、⑥よりope適応となる重症ASと判断する。

【選択肢考察】
a 正しい。重症ASであり、大動脈弁置換術の適応となる。
b 心室細動〈VF〉など致死的な頻脈性疾患が存在ないし出現予想できる際に有効。心室期外収縮の3連発だけでは適応とならない。
c 息切れと全身倦怠感が存在する重症ASであり、この状況下での運動負荷は★禁忌★。
d 息切れと全身倦怠感が存在する重症ASであり、この状況下での経過観察は不可。
e うっ血の強い心不全に有効。本症例は重症ASであり、ただでさえ駆出が低下している。この状況下で水分を抜き前負荷を落とすと心拍出がさらに低下する恐れがある。

正答率:99%

テーマ:大動脈弁狭窄症〈AS〉(二尖弁による)への対応

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