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【プロセス】
①32歳の女性
②昨晩同意のない性行為を強要された
③本日警察官に付き添われて受診
④警察官から被害状況の説明を受け、これから医師が診察
☞性暴力被害者への対応が問われているが、正答率は41％とかなり低い。これ系の問題は必要以上に攻めず、社会的・倫理的側面からアプローチするのが一番なのだが、医学的・知識的側面から回答を導いてしまった者が多かったようだ。「解説を聞けば（読めば）納得できるが、試験当日に独力だとできない」という典型パターンだろう。少なくともCBTや国試といった文字媒体を相手にする試験の最中には「今、自分は人間が作った唯一解の存在する試験を解いている」と意識する必要がある。むろん実際の病棟に出た際には「今、自分は無限通りの選択が存在しうる多様性の中、目の前の患者さんにとってのベストチョイスを二人三脚で模索している」と意識を切り替えることが重要だ。試験に答えはあるが、人生に答えはないのだから。

【選択肢考察】
ａ　性暴力により、性感染症に罹患した恐れがある。むろんHIVのようにしばらくの潜伏期を経ないと検出できない病原体もあるが、淋菌やクラミジアなど性交直後の検査が有効なものもある。もっと言えば、性交直後に陰性であることを示しておき、数週後に再検査をして陽性になっていないかを確認するということも有効だ。いずれにせよ「適切でない」選択肢ではない。
ｂ　性暴力により、望まない妊娠をしてしまう恐れがある。緊急避妊薬というオプションを提示し、本人の希望があれば処方する。
ｃ　当然ながら、本人の同意なしに婦人科診察は成立しない。
ｄ　約半数の受験生がこの選択肢を選んでしまった。いわゆる「レイプキット」と呼ばれる証拠保全ができる検査道具一式は全ての病院に置いてあるとは限らない（＝非現実的だ）、証拠保全など事件捜査は警察の管轄であり医師が行うものではない、など出題当時もさまざまな議論があった。が、本問は「適切でない」ものを問うているのだ。この文脈では、付き添いで来た警察官と相談した上で、被害者本人の同意も取得し、キットが存在するような状況を想定しても構わない。ゆえに本選択肢は対応として不適切とは言えない。
ｅ　誤り。④より、すでに被害状況の説明は済んでいる。再度、本人の口から説明させるのは心の傷をえぐる追い打ちとなりえ、心理的ダメージを与えてしまう恐れがある。性暴力の被害者が、被害者にも責任があるという趣旨の発言をされたり、周囲から好奇の目で見られたりすることで、さらなるダメージを負ってしまうことは、セカンドレイプなどとも呼ばれる。