116A43

28歳の男性。心窩部痛を主訴に来院した。2週間前から空腹時に軽度の心窩部痛を自覚していたが、昨日から増悪するため受診した。20歳から十二指腸潰瘍で繰り返し薬物治療を受けている。25歳時に下垂体腺腫摘出術を受けている。身長176cm、体重64kg。体温36.2℃。脈拍96/分、整。血圧98/62mmHg。腹部は平坦、軟で、上腹部に軽度の圧痛を認める。直腸指診で黒色便の付着を認める。血液所見:赤血球360万、Hb 11.5g/dL、Ht 36%、白血球8,800、血小板29万。血液生化学所見:総蛋白6.9g/dL、アルブミン3.6g/dL、ALP 192U/L(基準38~113)、尿素窒素20mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、Ca 11.6mg/dL、P 2.2mg/dL。上部消化管内視鏡検査で多発胃潰瘍および十二指腸潰瘍を認めた。頸部超音波検査で甲状腺背側に径0.5cmの腫瘤を認めた。腹部造影CT動脈相で膵体部に強く造影される径1cmの腫瘤を認めた。

この患者で上昇していると考えられるホルモンはどれか。

TSH
ACTH
ガストリン
カテコラミン
テストステロン

解答: c

116A43の解説

【プロセス】
①過去に十二指腸潰瘍で繰り返し薬物治療
②2週間前から空腹時に軽度の心窩部痛
③上腹部に軽度の圧痛
④直腸指診で黒色便の付着
⑤下垂体腺腫摘出術の既往
⑥アルブミン3.6g/dL・Ca 11.6mg/dL
⑦低リン血症
⑧上部消化管内視鏡検査で多発胃潰瘍および十二指腸潰瘍
⑨頸部超音波検査で甲状腺背側に径0.5cmの腫瘤
⑩腹部造影CT動脈相で膵体部に強く造影される径1cmの腫瘤
☞①より、②〜④は消化性潰瘍の再発が疑われる。事実、⑧でそう示されている。⑩より膵ガストリノーマが存在し、これによって消化性潰瘍が惹起されていると思われる。が、問題は複数臓器に渡るようだ。⑥より補正カルシウムは12mg/dLと高い。⑨は副甲状腺の腫瘤であろう。⑥⑦⑨を合わせて考えるに副甲状腺機能亢進症が疑われる。⑤の下垂体腺腫の存在もふまえ、多発性内分泌腫瘍症〈MEN〉type1の可能性が高い。

【選択肢考察】
a 今、甲状腺系のホルモン異常は考えにくい。
b 今、副腎皮質系のホルモン異常は考えにくい。
c 正しい。ガストリノーマの存在が考えられ、ガストリン上昇が予想される。
d 褐色細胞腫にて上昇する。
e 今、男性ホルモン異常は考えにくい。

正答率:99%

テーマ:多発性内分泌腫瘍症〈MEN〉 type1で上昇するホルモン

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