116A36

63歳の男性。腹痛、腹部膨隆を主訴に来院した。2年前から臍部の膨隆がみられていたが、これまで臥位で自然消失していた。3時間前から臍部は膨隆したままであり、腹痛が増悪するため受診した。4年前からアルコール性肝硬変で入退院を繰り返している。腹部手術の既往はない。来院時、意識は清明。身長169cm、体重68kg。体温36.5℃。脈拍58/分、整。血圧178/94mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜に異常を認めない。心音と呼吸音に異常を認めない。腹部は膨隆、緊満し波動を認め、腸雑音は亢進している。臍部に膨隆がみられる。血液所見:赤血球395万、Hb 12.0g/dL、Ht 36%、白血球5,800、血小板9.0万。血液生化学所見:総蛋白5.1g/dL、アルブミン2.1g/dL、総ビリルビン0.5mg/dL、AST 62U/L、ALT 54U/L、LD 252U/L(基準120~245)、ALP 85U/L(基準38~113)、γ-GT 59U/L(基準8~50)、アミラーゼ90U/L(基準37~160)、尿素窒素25mg/dL、クレアチニン1.7mg/dL、血糖195mg/dL、Na 138mEq/L、K 4.8mEq/L、Cl 107mEq/L。CRP 0.2mg/dL。腹部単純CTを別に示す。徒手整復を試みたが成功しなかった。

この患者に行う対応について適切なのはどれか。

緊急手術を行う。
下剤を投与する。
鎮痛薬を投与する。
徒手整復を繰り返す。
臍膨隆部の穿刺を行う。

解答: a

116A36の解説

【プロセス】
①2年前から臍部の膨隆(臥位で自然消失)
②3時間前から臍部は膨隆したまま(徒手整復を試みたが成功しない)
③腹部は膨隆、緊満し波動を認め、腸雑音は亢進
④臍部に膨隆
⑤腹部単純CTにて臍輪をヘルニア門として脱出したと思われる腸管構造が確認できる。また腹水貯留もあり。
⑥4年前からアルコール性肝硬変で入退院を繰り返している
☞①よりこの患者にはもともとヘルニアがあったと分かる。②③より、それが嵌頓した可能性が高い。④⑤より臍ヘルニア嵌頓の診断。⑤でみられる腹水は⑥によるものであろう。肝硬変や高度肥満といった背景のある者に臍ヘルニア嵌頓は多い。

【選択肢考察】
a 正しい。嵌頓しており、緊急手術の適応となる。
b ③より腸閉塞に至っている可能性が高い。この状況下での下剤投与は★禁忌★。
c たしかに腹痛はあるも、対症療法にすぎない。ヘルニア嵌頓に対する根本的な対応を行うべきである。
d 徒手整復を試みたが成功しておらず、これ以上のトライアルは腸管穿孔など害をもたらしかねない。
e 腸管を指すことになってしまう。★禁忌★。

正答率:97%

テーマ:臍ヘルニア嵌頓への対応

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