116A35

52歳の男性。全身倦怠感を主訴に来院した。6週間前に進行肺腺癌と診断され、3週間前に免疫チェックポイント阻害薬による初回治療を受けた。全身倦怠感が出現したため受診した。意識は清明であるが受け答えは緩慢である。体温36.8℃。脈拍108/分、整。血圧72/50mmHg。呼吸数20/分。SpO2 97%(room air)。軽度腫大した甲状腺を触知する。血液所見:赤血球320万、Hb 12.0g/dL、Ht 38%。血液生化学所見:血糖104mg/dL、TSH 0.1μU/mL(基準0.2~4.0)、ACTH 2.0pg/mL(基準60以下)、FT4 1.8ng/dL(基準0.8~2.2)、コルチゾール0.1μg/dL(基準5.2~12.6)であった。胸部エックス線写真で原発巣の縮小を認める。甲状腺超音波検査では軽度の甲状腺腫大以外は異常を認めない。

治療として適切なのはどれか。

赤血球輸血
インスリン投与
殺細胞性抗癌薬投与
甲状腺ホルモン投与
副腎皮質ステロイド投与

解答: e

116A35の解説

【プロセス】
①3週間前に免疫チェックポイント阻害薬による初回治療
②全身倦怠感が出現
③受け答えは緩慢
④軽度腫大した甲状腺を触知
⑤TSH低下
⑥ACTH低下(基準60以下とあるが2は低下とみなすべきなので注意)・コルチゾール低下
⑦胸部エックス線写真で原発巣の縮小を認める
☞①②より免疫チェックポイント阻害薬の副作用であることは想像がつく。③④⑤からは甲状腺異常の可能性があるも、FT4値は基準値内であり、今のところ代償はとれているようだ(甲状腺機能の低下症ないし亢進症があるかは断言できないし、本問解決上はその判断の必要もない)。⑥からは下垂体性の副腎皮質機能低下症がみてとれる。免疫チェックポイント阻害薬の副作用としての下垂体機能低下症、ならびに続発性副腎皮質機能低下症と判断しよう。

【選択肢考察】
a Hb 12.0g/dLと保たれており、赤血球輸血の必要はない。
b 血糖104mg/dLと高血糖は示しておらず、インスリン投与の必要はない。
c ⑦より進行肺腺癌については治癒傾向のようだ。抗癌薬の追加はさしあたり必要ない。
d 免疫チェックポイント阻害薬の副作用として甲状腺機能異常(亢進症・低下症ともに出現しうる)が存在する。しかしながら本患者において、FT4値は基準値内であり、甲状腺ホルモン投与はさしあたり不要と考えられる。
e 正しい。続発性の副腎皮質機能低下症が考えられるため、不足しているホルモンである副腎皮質ステロイドの投与が第一選択となる。

正答率:99%

テーマ:下垂体前葉機能低下症の治療

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