116A31

48歳の女性。口渇と全身倦怠感を主訴に来院した。5日前に発熱と腹痛があった。食事はいつも通り摂取している。意識は清明。体温36.8℃。脈拍84/分、整。血圧108/68mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。尿所見:蛋白(−)、糖3+、ケトン体3+、潜血(−)。血液所見:Hb 13.2g/dL、白血球9,500、血小板24万。血液生化学所見:血糖440mg/dL、HbA1c 5.8%(基準4.6~6.2)、Cペプチド0.2ng/mL(基準0.8~2.5)。

患者への説明として適切なのはどれか。

「食事と運動で良くなります」
「直ちにインスリンを使用します」
「まず飲み薬で糖尿病の治療を始めます」
「HbA1cが正常なので糖尿病とはいえません」
「経過観察のため半年後に受診してください」

解答: b

116A31の解説

【プロセス】
①5日前に発熱と腹痛
②口渇と全身倦怠感を主訴に来院
③尿糖3+、尿ケトン体3+
④血糖440mg/dL、HbA1c 5.8%
⑤Cペプチド低下
☞④ではHbA1cが基準値内にあり、これは短期間で完成した高血糖であることを意味する。①の前駆感染があり、②③がみられていることから糖尿病性ケトアシドーシス〈DKA〉と判断できる。⑤はインスリン分泌ができていないことを意味し、このことから劇症1型糖尿病と考えられる。

【選択肢考察】
a DKAの治療は生理食塩水と速効型インスリンの投与。食事と運動では改善が期待できない。
b 正しい。直ちに速効型インスリンを投与開始すべきだ。
c 1型糖尿病であり、経口血糖降下薬の効果は期待できない。
d たしかに血糖値だけでは糖尿病の診断ができない。ただし、HbA1cが基準範囲内であったとしても、口渇など典型症状を代替に糖尿病の診断が可能。もっとも出題者はそれ以前の議論をしているのかもしれない。HbA1cの値が正常だからといって糖尿病をすぐさま除外すると、本症例のような劇症1型を見逃すことがあるから注意して、と喚起を呼びかけている印象を受けた。
e 早急な対応が必要だ。生命の危機に至る恐れもあり、経過観察をしてはならない。

正答率:97%

テーマ:劇症1型糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシス〈DKA〉)患者への説明

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