115F66

次の文を読み、以下の問いに答えよ。
68歳の男性。歩行時の息苦しさとわずかな喀痰を主訴に来院した。
現病歴:1週前から歩行時の息苦しさとわずかな喀痰を自覚していた。
既往歴:30歳時に虫垂炎のため虫垂切除術を受けた。65歳時にHIV感染症と診断されたが治療を受けずに通院を中断していた。同時期から不眠となり、ベンゾジアゼピン系薬を時折内服している。
生活歴:会社員としてアメリカやヨーロッパで勤務した後に帰国、その後相談役として週2回程度出社している。喫煙は15本/日を20歳から40歳の20年間。飲酒は機会飲酒。
家族歴:父が高血圧症。
現 症:意識は清明。身長172cm、体重58kg。体温37.5℃。脈拍120/分、整。血圧120/40mmHg。呼吸数28/分。SpO2 90%(room air)。頸部リンパ節に腫大を認めない。心音に異常を認めない。両側背部でfine cracklesを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。腹部の手術痕以外に異常を認めない。背部に叩打痛を認めない。皮膚に異常を認めない。
検査所見:血液所見:赤血球300万、Hb 9.2g/dL、Ht 30%、白血球4,800(桿状核好中球17%、分葉核好中球67%、好酸球8%、好塩基球0%、リンパ球8%)、CD4陽性細胞数126/mm3(基準800~1.200)、血小板25万。血液生化学所見:総蛋白6.2g/dL、アルブミン3.0g/dL、総ビリルビン0.8mg/dL、AST 28U/L、ALT 18U/L、LD 250U/L(基準120~245)、ALP 120U/L(基準115~359)、尿素窒素40mg/dL、クレアチニン1.0mg/dL、Na 131mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 97mEq/L。免疫血清学所見:CRP 3.2mg/dL、HBc抗体陰性、HBs抗原陰性、HCV抗体陰性、HIV抗原・抗体陽性。動脈血ガス分析(room air):pH 7.43、PaCO2 35Torr、PaO2 58Torr、HCO3- 24mEq/L。
胸部造影CTを別に示す。

この患者について正しいのはどれか。

A-aDO2は開大している。
CO2ナルコーシスである。
直ちに気管挿管を実施する。
肺胞低換気が低酸素血症の原因である。
ベンゾジアゼピン系薬の過量内服を疑う。

解答: a

115F66の解説

【プロセス】
①高齢男性
②息苦しさ・喀痰
③HIV感染症と診断済だが未治療
④両側背部でfine cracklesを聴取
⑤CD4陽性細胞数低下
⑥PaO2<60Torr(呼吸不全)
⑦胸部造影CTにて広範なスリガラス影
③⑤よりAIDS発症していると考えられる。④⑦よりニューモシスチス肺炎が疑われ、②⑥も説明がつく。

【選択肢考察】
a 正しい。A-aDO2=150−PaO2−PaCO2/0.8=150−58−35/0.8=48.25。20を超えており、開大していると言える。
b PaCO2は上昇しておらず、CO2貯留はみられない。
c 自発呼吸が停止していたり、気道狭窄・閉塞がみられているわけではない。通常の酸素投与をまずは試みるべきだ。
d PaCO2は上昇しておらず、I型呼吸不全である。肺胞低換気はII型呼吸不全を呈するため、否定的。
e ベンゾジアゼピン系薬の過量内服の場合、呼吸数低下が予想される。今、28/分であるため否定的。

正答率:94%

テーマ:【長文1/3】ニューモシスチス肺炎患者について

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