115E41

次の文を読み、以下の問いに答えよ。
75歳の男性。呼吸困難を主訴に受診した。
現病歴:3日前に飛行機で1泊2日の旅行をし、2日前に帰宅した。機内では約3時間座っていた。帰宅した翌日に右下肢のむくみと痛みが出現した。受診日の朝起床後に急に労作時の息切れが出現したため、受診した。受診時、呼吸困難を訴えている。
既往歴:60歳時に進行胃癌で胃全摘を受けた。術後5年間再発なく、通院終了となった。70歳から高血圧症、糖尿病に対し、降圧薬、経口血糖降下薬を内服中。
アレルギー歴:特記すべきことはない。
生活歴:喫煙は40本/日を40年間、15年前に禁煙。飲酒は日本酒1合を週1回。妻と2人暮らし。偏食はない。
家族歴:特記すべきことはない。
現 症:意識は清明。身長162cm、体重60kg。体温36.1℃。脈拍112/分、整。血圧90/55mmHg、左右差はない。呼吸数28/分。SpO2 91%(room air)。眼瞼結膜は貧血様で、眼球結膜に黄染を認めない。口腔内と咽頭に異常を認めない。頸静脈怒張を認める。甲状腺と頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、正中に手術痕を認める。右下腿は腫脹しており、圧痕性浮腫、熱感および発赤を認める。両側足背動脈は触知良好である。
検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)、ケトン体(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球250万、Hb 8.4g/dL、Ht 33%、MCV 132fL、白血球10,200(好中球80%、好酸球1%、好塩基球1%、単球2%、リンパ球16%、好中球の核過分葉を認める)、血小板10万、PT-INR 1.0(基準0.9~1.1)、APTT 31.6秒(基準対照32.2)、Dダイマー2.3μg/mL(基準1.0以下)。血液生化学所見:総ビリルビン1.0mg/dL、AST 21U/L、ALT 9U/L、LD 306U/L(基準120~245)、ALP 187U/L(基準115~359)、CK 60U/L(基準30~140)、尿素窒素11mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、血糖114mg/dL、HbA1c 6.9%(基準4.6~6.2)、Na 140mEq/L、K 4.1mEq/L、Cl 105mEq/L、Ca 8.4mg/dL。CRP 2.9mg/dL。
心電図(A)及び胸部エックス線写真(B;坐位AP像)を別に示す。

診断はどれか。

急性冠症候群
脂肪塞栓
心膜炎
大動脈解離
肺血栓塞栓症

解答: e

115E41の解説

【プロセス】
①呼吸困難
②3日前に飛行機
③翌日に右下肢のむくみと痛み
④Dダイマー上昇
⑤心電図ではいわゆるS1Q3T3(I誘導で深いS波・III誘導でQ波と陰性T波)とV1〜V4の陰性T波
⑥胸部エックス線では肺動脈の拡張(左2弓は突出)
②③④より下肢に静脈血がうっ滞し、深部静脈血栓〈DVT〉をきたしたものと考えられる。①⑤より血栓が肺に飛び、肺血栓塞栓症を呈した可能性が高い。⑥も矛盾しない。

【選択肢考察】
a ASTやCK上昇がなく、心電図所見も合致しない。
b 骨折後にみられることが多い。また、Dダイマーは上昇しない。
c 胸痛が主訴となる。心嚢水貯留や心膜摩擦音といったキーワードも記載がない。また、心電図で広範なST上昇を認める。
d 胸背部痛をみる。また、エックス線写真で縦隔の拡大が出現する。
e 正しい。上記の通り。

正答率:99%

テーマ:【長文1/2】肺血栓塞栓症の診断

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