115D41

44歳の女性。咳嗽と血痰を主訴に来院した。2か月前から左頬部痛、両耳痛、難聴および鼻出血が出現するようになった。その後、難聴は悪化し、4日前から咳嗽および血痰が出現したため受診した。意識は清明。体温37.7℃。脈拍84/分、整。血圧132/68mmHg。呼吸数18/分。SpO2 95%(room air)。左眼瞼下垂と左眼球突出を認める。左眼球結膜には充血と浮腫を認める。瞳孔の大きさや対光反射に異常を認めない。眼球運動は保たれているが左方視で複視を認める。両側鼓膜に発赤と腫脹を認める。鼻根部は軽度陥凹し、同部に圧痛を認める。鼻中隔穿孔を認める。心音に異常を認めない。右胸部背側下部の呼吸音の減弱を認める。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。表在リンパ節を触知しない。尿所見:蛋白1+、潜血2+、沈査に赤血球20~29/HPF、赤血球円柱を認める。血液所見:赤血球468万、Hb 13.9g/dL、Ht 42%、白血球10,100(桿状核好中球30%、分葉核好中球45%、好酸球1%、好塩基球1%、単球6%、リンパ球17%)、血小板41万。血液生化学所見:総蛋白6.7g/dL、アルブミン2.8g/dL、AST 11U/L、ALT 7U/L、LD 173U/L(基準120~245)、ALP 217U/L(基準115~359)、γ-GT 14U/L(基準8~50)、CK 42U/L(基準30~140)、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、Na 137mEq/L、K 3.6mEq/L、Cl 97mEq/L。CRP 21mg/dL。眼窩・副鼻腔単純CTの冠状断像(A)及び胸部単純CT(B)を別に示す。

最も考えられるのはどれか。

肺癌
悪性リンパ腫
サルコイドーシス
播種性真菌感染症
多発血管炎性肉芽腫症〈Wegener肉芽腫症〉

解答: e

115D41の解説

【プロセス】
①咳嗽と血痰
②左頬部痛・両耳痛・難聴・鼻出血
③左眼瞼下垂と左眼球突出
④左眼球結膜には充血と浮腫
⑤左方視で複視
⑥鼻根部は軽度陥凹(鞍鼻)
⑦鼻中隔穿孔
⑧右胸部背側下部の呼吸音の減弱
⑨尿蛋白と血尿
⑩画像Aにて左眼窩外側の腫瘤影と左副鼻腔の充実性陰影・鼻中隔穿孔
⑪画像Bにて空洞を伴う浸潤影
多発血管炎性肉芽腫症〈GPA〉〈Wegener肉芽腫〉では上気道[E]、肺[L]、腎[K]の3部位に主たる病変が出現する。Eが②⑥⑦⑩、Lが①⑧⑪、Kが⑨である。ほか、眼の症状も有名であり、③④⑤⑩が該当する。

【選択肢考察】
a 眼や副鼻腔の症状が説明つかない。
b 表在リンパ節を触知しておらず、LDなど悪性リンパ腫を疑わせる検査項目の異常もない。
c 全身疾患であり、眼や肺の症状が確かに出現するが、副鼻腔炎症状など合致しない項目が多い。
d 44歳女性と比較的若めの患者で、かつ特に免疫低下するような背景の記載もないため、考えにくい。
e 正しい。上記の通り。

正答率:94%

テーマ:多発血管炎性肉芽腫症〈GPA〉〈Wegener肉芽腫〉の診断

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