115D38

64歳の男性。両側顎下部の腫脹を主訴に来院した。1年前から家人に両まぶたが腫れていると指摘されるようになった。2週前から両側顎下部に痛みを伴わない腫脹が出現し、腫れが持続するため受診した。体温36.5℃。脈拍64/分、整。血圧110/76mmHg。両側顎下部に径2cmの腫瘤を触知し、圧迫により唾液流出を認める。圧痛はない。咽頭、喉頭に腫瘤性病変を認めない。血液所見:赤血球445万、Hb 14.6g/dL、Ht 44%、白血球5,500、血小板27万。血液生化学所見:総蛋白7.8g/dL、アルブミン4.5g/dL、IgG 1,714mg/dL(基準960〜1,960)、IgA 274mg/dL(基準110~410)、IgM 55mg/dL(基準65~350)、IgG4 515mg/dL(基準4.8〜105)、総ビリルビン2.1mg/dL、AST 26U/L、ALT 35U/L、γ-GT 118U/L(基準8〜50)、アミラーゼ170 U/L(基準37〜160)、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン1.0mg/dL、血糖124mg/dL、HbA1c 6.3%(基準4.6〜6.2)。免疫血清学所見:抗核抗体陰性、リウマトイド因子〈RF〉陰性、CH50 20U/mL(基準30〜40)、C3 38mg/dL(基準52〜112)、C4 8mg/dL(基準16〜51)。頸部造影CTを別に示す。右顎下腺生検病理組織では、著明なリンパ球、形質細胞の浸潤と線維化を認めた。免疫染色ではIgG4/IgG陽性細胞比50%、IgG4陽性形質細胞50/HPFであった。

この患者で認める可能性が低い所見はどれか。

両側涙腺腫大
膵びまん性腫大
総胆管の壁肥厚
多発性骨融解像
びまん性腎腫大

解答: d

115D38の解説

【プロセス】
①64歳の男性
②両側顎下部に径2cmの腫瘤を触知し、圧迫により唾液流出
③IgG・IgG4ともに高値
④総ビリルビン・γ-GT・アミラーゼの軽度上昇
⑤血糖値とHbA1cは糖尿病の診断までは行かないが高値
⑥補体低下
⑦頸部造影CTにて両側顎下腺の腫大
⑧右顎下腺生検病理組織にて著明なリンパ球・形質細胞の浸潤と線維化
⑨免疫染色ではIgG4/IgG陽性細胞比50%・IgG4陽性形質細胞50/HPF
③⑧⑨よりIgG4関連疾患〈IgG4RD〉の診断は容易。これによる顎下腺腫脹で②⑦は説明がつく。④⑤は自己免疫性膵炎の合併を疑わせる。⑥は原因不明であるが、IgG4RDにてしばしばみられることが知られている。

【選択肢考察】
a 顎下腺のほか、涙腺や耳下腺、舌下腺の腫大をみる。
b 自己免疫性膵炎を合併し、膵はびまん性に腫大する。
c 硬化性胆管炎を合併し、総胆管の壁肥厚をみる。
d 誤り。悪性腫瘍などでみられる所見であり、IgG4RDでは出現しない。
e IgG4関連腎臓病により、腎はびまん性に腫大する。

正答率:96%

テーマ:IgG4関連疾患の所見

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