115C56

53歳の男性。上腹部痛を主訴に来院した。24歳ころからワインや日本酒を多飲している。6か月前から上腹部に鈍痛を自覚し、2週前から痛みが増強したため受診した。意識は清明。身長165cm、体重54kg。体温36.4℃。脈拍72/分、整。血圧128/60mmHg。腹部は平坦で、上腹部に圧痛を認める。血液所見:赤血球340万、Hb 12.2g/dL、Ht 34%、白血球6,100、血小板16万。血液生化学所見:総蛋白6.7g/dL、アルブミン3.6g/dL、総ビリルビン1.0mg/dL、AST 74U/L、ALT 53U/L、LD 291U/L(基準120~245)、ALP 368U/L(基準115〜359)、γ-GT 130U/L(基準8〜50)、アミラーゼ44U/L(基準37~160)、尿素窒素14mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、尿酸7.9mg/dL、血糖278mg/dL、HbA1c 10.6%(基準4.6〜6.2)、総コレステロール209mg/dL、トリグリセリド150mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 103mEq/L。腹部CTを別に示す。

この患者への指導として適切なのはどれか。2つ選べ

禁酒
塩分制限
水分制限
脂肪制限
蛋白制限

解答: a,d

115C56の解説

【プロセス】
①中年男性
②上腹部痛
③飲酒過多
④アミラーゼ正常下限程度
⑤血糖値とHbA1cから糖尿病の診断
⑥腹部CTにて膵内部のびまん性石灰化
①③(長年の飲酒過多)に由来し、②⑥より慢性膵炎をきたしていると考えられる。慢性膵炎ではインスリン分泌が低下するため、⑤も矛盾しない。④を疑問に感じた者もいるかもしれないが、末期の慢性膵炎ではアミラーゼが枯渇し、むしろ低下することを復習されたい。

【選択肢考察】
a 正しい。アルコールが原因と考えられるため、禁酒を指導する。
b 塩分摂取は慢性膵炎のリスクではない。また本患者では高血圧もみられないため、不要。
c 胸水や腹水がみられているわけでもなく、腎障害も認めない。特に水分制限をする必要はない。
d 正しい。慢性膵炎では膵外分泌能の低下により、脂肪分解酵素の産生が低下する。そのため、脂肪制限食が推奨される。
e 肝硬変や慢性腎臓病の存在は指摘できないため、蛋白制限は必要ない。

正答率:97%

テーマ:慢性膵炎患者への指導

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