115A60

64歳の男性。股関節痛を主訴に来院した。半年ほど前から両側の股関節痛を自覚し、会社の診療所で処方された鎮痛薬を不定期に内服していたが痛みが改善しないため受診した。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。表在リンパ節は触知しない。血液所見:赤血球353万、Hb 11.5g/dL、Ht 34%、白血球3,200、血小板16万。血液生化学所見:総蛋白10.5g/dL、アルブミン3.9g/dL、IgG 5,425mg/dL(基準960〜1,960)、IgA<20mg/dL(基準110〜410)、IgM<10mg/dL(基準65〜350)、総ビリルビン0.7mg/dL、AST 19U/L、ALT 10U/L、LD 178U/L(基準120〜245)、尿素窒素11mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、尿酸4.7mg/dL、Na 141mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 108mEq/L、Ca 9.8mg/dL。エックス線写真で両股、胸椎および腰椎に多発する溶骨性病変を認める。両股関節エックス線写真(A)、骨髄血塗抹May-Giemsa染色標本(B)、血清蛋白分画、免疫電気泳動検査写真(C)を別に示す。

この患者の治療として適切でないのはどれか。

デキサメタゾン
自家末梢血幹細胞移植
ビスホスホネート製剤
プロテアソーム阻害薬
多発性骨病変に対する放射線照射

解答: e

115A60の解説

【プロセス】
①64歳の男性
②半年ほど前からの両側股関節痛
③血球減少傾向
④総蛋白高値だがアルブミン低値
⑤IgG高値だが他免疫グロブリンが抑制されている
⑥画像A含む各所のエックス線写真で多発溶骨性病変
⑦画像Bにて核周囲明庭を伴う異常形質細胞の増殖
⑧画像C左にてMピーク
⑨画像C右にてIgGとKappa鎖に強いモノクローナルバンド
多発性骨髄腫〈MM〉の診断

【選択肢考察】
a 副腎皮質ステロイド薬の一種であるデキサメタゾンが治療に有効。
b 65歳未満のケースでは自家末梢血幹細胞移植も行われる。
c 骨吸収抑制を狙い、ビスホスホネート製剤が有効。
d プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ)が治療に有効。
e 誤り。たしかに疼痛緩和を目的とした限局的な放射線照射を行うことはある。しかし本症例では両股・胸椎および腰椎に多発した溶骨病変があるため、これらすべてに放射線照射をすることは現実的でない。

正答率:36%

テーマ:多発性骨髄腫〈MM〉の治療

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