115A36

52歳の男性。下腹部の緊満と排尿ができないことを主訴に受診した。今朝、自宅で脚立から足を踏みはずして会陰部を打撲した。受診時、外尿道口からの出血を認める。意識は清明。身長168cm、体重72kg。体温36.7℃。脈拍72/分、整。血圧124/84mmHg。呼吸数20/分。会陰部の自発痛を訴え、皮下の膨隆と圧痛を認める。下腹部は緊満している。血液所見:赤血球450万、Hb 14.1g/dL、Ht 42%、白血球13,200、血小板25万。血液生化学所見:総蛋白7.5g/dL、アルブミン4.0g/dL、総ビリルビン1.2mg/dL、AST 23U/L、ALT 22U/L、LD 179U/L、(基準120~245)、尿素窒素16mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、尿酸5.5mg/dL、血糖98mg/dL、Na 141mEq/L、Cl 104mEq/L、Ca 9.9mg/dL。腹部エックス線写真では骨盤骨折を認めない。骨盤部CTでは会陰部に血腫を認める。逆行性尿道造影では膜様部尿道で造影剤の尿道外の溢流を認め、膀胱は造影されない。

まず行う処置として適切なのはどれか。

血液透析を行う。
腎瘻を造設する。
膀胱瘻を造設する
尿管ステントを留置する。
外腸骨動脈の塞栓術を行う。

解答: c

115A36の解説

【プロセス】
①会陰部の打撲
②外尿道口からの出血
③会陰部の自発痛・皮下の膨隆と圧痛
④下腹部緊満・排尿できない
⑤エックス線にて骨盤骨折は無し
⑥CTにて会陰部に血腫
⑦逆行性尿道造影にて造影剤の尿道外溢流
①③からは骨盤骨折を想定するが、⑤で否定される。②⑥⑦より尿道損傷と考えられ、④はそれに由来する尿閉で膀胱がパンパンになっている状況と言える。

【選択肢考察】
a 急性腎障害を示唆する検査所見に乏しく、血液透析は不要。
b 充満しているのは膀胱であり、腎からのアプローチは優先されない。
c 正しい。尿閉時にはまず導尿を試みるのが一般的だが、本症例では尿道損傷があり現実的でない。そのため、膀胱瘻を造設するのが第一手となる。
d 尿管が閉塞している際の対応である。
e 骨盤骨折などにより大量出血している際に止血目的に動脈塞栓術が行われることがある。しかしその場合でも、下肢へと血流を提供する重要動脈である外腸骨動脈を塞栓することはない。★禁忌★

正答率:95%

テーマ:尿道損傷による尿閉への処置

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