115A27

46歳の女性。息苦しさと全身倦怠感を主訴に来院した。半年前に手指と手首の関節痛および頬部の皮疹が出現し、全身性エリテマトーデス〈SLE〉の診断で副腎皮質ステロイドとヒドロキシクロロキンが導入された。その後、症状は軽快していたが、1週前から息苦しさ、全身倦怠感および前胸部の違和感が出現した。症状が増悪するため、本日夜8時に救急外来を受診した。体温37.8℃。脈拍102/分、整。血圧100/72mmHg。SpO2 96%(room air)。頬部に紅斑を認める。両側の中指近位指節間関節と手関節の腫脹を認める。頸静脈怒張は吸気時に顕著となる。心音ではI音とII音の減弱を認める。呼吸音には異常を認めない。下腿に軽度の浮腫を認める。血液所見:赤血球346万、Hb 10.8g/dL、Ht 33%、白血球7,200、血小板15万。血液生化学所見:ALT 26U/L、LD 160U/L(基準120~245)、クレアチニン0.5mg/dL、脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉56pg/mL(基準18.4以下)。CRP 3.8mg/dL。収縮期血圧は呼気時に比べ吸気時に18mmHg低下する。胸部エックス線写真ではCTR 55%、肺野に異常を認めない。心電図では肢誘導に低電位を認める。心エコー図(A、B)を別に示す。

この患者の呼吸困難感の原因として最も考えられる病態はどれか。

心外膜炎
心内膜炎
間質性肺炎
肺血栓塞栓症
肺動脈性肺高血圧症

解答: a

115A27の解説

【プロセス】
①中年女性
②SLEの診断で服薬中
③1週前から息苦しさと全身倦怠感および前胸部違和感
④吸気時に顕著となる頸静脈怒張(Kussmaul徴候)
⑤心音減弱
⑥収縮期血圧が吸気時に10mmHg以上低下(奇脈)
⑦心電図で低電位
⑧心エコーにてecho free space(心嚢液貯留)
④⑥からは高度な右心不全が想定され、⑤⑦⑧からは心タンポナーデが考えやすい。すると③の症候も説明がつく。②からSLEを背景とした心外膜炎により、心嚢液貯留が起こったものと考えられる。

【選択肢考察】
a 正しい。上記の通り。
b 心内膜炎であれば、弁の破壊とそれによる心雑音が聴取されるはずである。心エコーでも弁の変化(疣贅付着など)が描出されるはずである。
c 呼吸音に異常を認めておらず、否定的。
d IIp音の亢進がみられるはずである。また、右室拡大が予想されるが、心エコーでその所見は現状指摘できない。
e IIp音の亢進がみられるはずである。また、右室拡大が予想されるが、心エコーでその所見は現状指摘できない。

正答率:78%

テーマ:全身性エリテマトーデス〈SLE〉に合併した心外膜炎の診断

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