115A24

55歳の男性。夜中の記憶がないことを主訴に妻とともに来院した。数年前に不眠に対して睡眠薬を処方されて以来、継続して服用し、仕事を続けていた。経営していたレストランに2週前に泥棒が入り、ひどく落ち込んでいる様子であった。昨日、午後7時に帰宅して夕食を済ませ、午後11時に就床した。翌日の午前1時頃、少しでも本人を励まそうとする友人から、カラオケに誘う電話があり、カラオケ店にタクシーで行き宴会に参加し、午前4時頃帰宅した。帰宅後約8時間睡眠をとって午後勤務についたが、夜中のことを全く覚えていない。友人によると普通に歌い飲食したとのことであった。アルコールは全く飲めず、当日も飲酒していない。妻の話によると2か月前くらいから夜中に食事をしたり、コンビニエンスストアに行ったりしていることを、翌朝全く覚えてないことが3回あったという。

この患者で考えられる疾患はどれか。

夜間せん妄
一過性全健忘
全生活史健忘
睡眠薬による前向健忘
レム〈REM〉睡眠行動障害

解答: d

115A24の解説

【プロセス】
①夜間の記憶がない
②睡眠薬を処方され継続服用していた
③泥棒が入りひどく落ち込んでいた
④昨夜は午後11時に就寝した
⑤カラオケ店で宴会したエピソードを忘れていた
⑥アルコールは飲めないし昨夜も飲んでいない
⑦同様の症状が2か月前くらいから3回あった
おそらくは④のタイミングで睡眠薬を服用したものと考えられる。ベンゾジアゼピン系の睡眠薬には前向健忘の副作用がある。そのため、⑤のカラオケ店での記憶がなくなってしまったのであろう。アルコール過剰摂取によっても同様の健忘がみられうるも、⑥からは否定的。③の本症例への直接の因果関係は不明であるが、落ち込んで眠れない日々が続いており、睡眠薬の服用に拍車がかかっていたと考えることもできる。

【選択肢考察】
a 友人によれば普通に歌い飲食をしており、夜間せん妄は否定的。
b 一過性の強い前向健忘がみられる状態であり、新たな記憶もできなくなる。一般に反復はしないため、⑦が矛盾する。
c 主に自分に関する事項の逆行性かつ全健忘。本症例では前向健忘がみられており、否定的。
d 正しい。上記の通り。
e 夜間の異常行動がみられる。友人によれば普通に歌い飲食をしており、否定的。

正答率:81%

テーマ:睡眠薬による前向健忘の診断

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