114E29

28歳の男性。ふらつきを主訴に家族に伴われて来院した。高校在学中に不登校となり、そのまま自宅2階の自室に引きこもるようになった。高校は退学となり、仕事には就かず1日中カーテンを閉め切ってオンラインゲームに熱中していた。食事は母親が自室の前に提供していたが偏食が激しい。3か月前から夜にコンビニエンスストアに出かける際に暗いところで歩行が左右にふらついていることに家族が気付いていた。立ちくらみはなく、日中はトイレに行くときに見かけるのみだが、ふらつきはみられないという。喫煙歴と飲酒歴はない。眼瞼結膜に貧血はなく、心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。神経診察では眼球運動は正常で眼振を認めない。指鼻試験および膝踵試験に異常を認めない。不随意運動はみられない。腱反射は全般に低下しており起立閉眼で体幹の動揺が増強する。

ビタミンB12とともにこの患者の症状の原因と考えられる不足栄養素はどれか。

葉酸
ビタミンD
マグネシウム

解答: b

114E29の解説

若い男性のふらつき。日中はふらつきがないも、暗いところでふらつく、ということは実質的にRomberg徴候陽性と考えられる。実際、本文中最後にその旨が記載ある(「起立閉眼で〜」というところ)。Romberg徴候陽性の場合は内耳性または脊髄後索障害を考えるが、今回は引きこもりで偏食が激しいことから、ビタミンB12欠乏による亜急性連合性脊髄変性症が疑わしい。
a 胃全摘後の貧血でビタミンB12性とセットで押さえるべきだが、本症例では胃全摘の既往がないため、関係ない。
b 正しい。銅欠乏性貧血では亜急性連合性脊髄変性症と同様の症状を呈することが知られている。鑑別の対象となる。
c 約65%の受験生が選んだ選択肢。葉酸欠乏でも大球性貧血を呈するため、ビタミンB12欠乏性の大球性貧血と鑑別すべきだが、そもそも葉酸欠乏では神経症状が出現しない。市販の解説書ではこれを正答としているものもあるが、採点除外問題で正答が厚労省から公表されていないため、なんとも言えない。本稿執筆者(穂澄)の見解としては、葉酸ではなく銅が出題者の意図した正解と考える。が、繰り返しになるが、なんとも言えない問題であり、どのように、どこまで覚えるかは受験生の判断に委ねることとする。
d 日光を浴びない生活をしていた若い男性であり、これを選んだ受験生も約20%いた。が、ビタミンD欠乏症と臨床症状が合致しないため、誤り。
e マグネシウム欠乏により様々な病相を呈するため、これを選んだ受験生も約10%いた。が、臨床症状が合致しないため、誤り。

正答率:2%

テーマ:亜急性連合性脊髄変性症の鑑別として留意すべき病態

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