114D52

80歳の女性。右上腹部痛、体重減少および皮膚の黄染を主訴に来院した。1年前から食後に軽度の悪心を自覚していた。3か月前から食後に右上腹部痛が出現するため好物の天ぷらを食べたくなくなったという。1か月前から体重が減少し、家族に皮膚の黄染を指摘され受診した。身長145cm、体重38kg。体温36.7℃。脈拍92/分、整。血圧114/70mmHg。呼吸数14/分。眼瞼結膜は軽度貧血様で、眼球結膜に黄染を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦で、心窩部から右季肋部にかけて圧痛を認め、同部に呼吸に応じて移動する径3cmの腫瘤を触知する。尿所見:蛋白(−)、糖(−)、ウロビリノゲン(−)、潜血(−)、ビリルビン1+。便潜血反応陰性。血液所見:赤血球354万、Hb 10.9g/dL、Ht 34%、白血球6,700、血小板14万。血液生化学所見:総蛋白5.8g/dL、アルブミン3.1g/dL、総ビリルビン4.8mg/dL、AST 76U/L、ALT 65U/L、LD 759U/L(基準120〜245)、γ-GT 145U/L(基準8〜50)、アミラーゼ134U/L(基準37〜160)、尿素窒素19mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、血糖118mg/dL、Na 138mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 100mEq/L、CEA 6.7ng/mL(基準5以下)、CA19-9 89U/mL(基準37以下)。CRP 0.4mg/dL。胸部および腹部エックス線写真で異常を認めない。腹部超音波検査で両側肝内胆管の拡張と肝門部での途絶を認めた。

次に行うべき検査として適切なのはどれか。

腹部造影CT
超音波内視鏡検査
下部消化管内視鏡検査
上部消化管内視鏡検査
内視鏡的逆行性胆管膵管造影〈ERCP〉

解答: a

114D52の解説

高齢女性の右上腹部痛、体重減少、黄疸。「天ぷら」というキーワードからは胆石症も考えるが、高齢者であること、径3cmの腫瘤を触知していること、胆嚢炎を考えるにしては炎症所見に乏しいこと、腫瘍マーカーが高値なこと、などを考えるに胆道系の悪性腫瘍が疑わしい。最終文に記載のあるエコー所見からは肝門部の病変なのだろうが、「呼吸に応じて移動する径3cmの腫瘤」という記載からは原発性の肝門部胆管癌というよりも、胆嚢癌の肝門部浸潤が考えやすい。
a 正しい。まずは造影CTにて原因となる腫瘍の存在部位や広がりを同定したい。
b 壁深達度をみるために有効。現時点ではまず大まかな腫瘍位置の同定が優先される。
c 下部消化管は本症例では関係がない。
d 上部消化管は本症例では関係がない。
e 胆管や膵管の評価が可能。実に半数強の受験生がこの選択肢を選び、撃沈してしまった。選びたくなる気持ちはとてもよくわかる。胆道の病変が疑われるわけだから、Vater乳頭側から胆道を造影すれば腫瘤影がみえるのではないか、と思えてしまうのだ。むろん、ERCPにて腫瘤影は同定されるであろう。が、肝門部に浸潤があることはすでに腹部超音波検査で十分に予想できる。今みたいのは他臓器まで含めた、浸潤の程度である。もっと言えば、診療プロセス的に現時点では血液検査とエックス線検査、超音波検査をした程度だ。ここから一気に侵襲を伴う内視鏡検査にいくのは飛躍がある。まずは造影CTにて大まかな位置決定を行いたい。

正答率:42%

テーマ:肝門部胆管癌の検査

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