114D26

48歳の女性。食欲低下と倦怠感を主訴に来院した。5日前から感冒様症状と食欲低下があり、市販薬を内服して寝込んでいた。昨日から倦怠感が強くなり、さらに今朝になって呼吸困難やふらつきも生じたため受診した。既往歴、生活歴および家族歴に特記すべきことはない。身長160cm、体重50kg。脈拍116/分、整。血圧86/50mmHg。呼吸数24/分。SpO2 93%(room air)。心音は奔馬調律。両下胸部にcracklesを聴取する。血液所見:赤血球495万、Hb 14.6g/dL、白血球11,000、血小板17万。血液生化学所見:AST 2,324U/L、ALT 2,532U/L、LD 3,292U/L(基準120〜245)、CK 6,064U/L(基準30〜140)、尿素窒素47mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、総ビリルビン1.4mg/dL。CRP 2.3mg/dL。来院時の心電図(A)を別に示す。心エコー検査で左室拡張末期径50mm、左室駆出率は20%。その後、完全房室ブロックが出現し、一時的ペースメーカー留置とともに冠動脈造影を行った。冠動脈造影像(B)を別に示す。

最も疑われる疾患はどれか。

急性心筋炎
拡張型心筋症
急性心筋梗塞
たこつぼ心筋症
急性肺動脈塞栓症

解答: a

114D26の解説

食欲低下と倦怠感を主訴に来院した48歳女性。先行する感冒症状の後に心機能低下を認めており急性心筋炎を考える。LDやCKが高度上昇していることも筋崩壊を示唆する。画像ではAにて全体的な低電位を認める。Bでは有意な狭窄を認めない。
a 正しい。冠動脈造影検査では有意狭窄はなく、急激に進行する心機能低下という病歴に最も合致する。
b 拡張型心筋症は長い年月をかけて徐々に進行する。本症例では既往歴に特記すべきことはなく考えにくい。
c 冠動脈造影検査にて有意狭窄を認めないことから考えにくい。
d たこつぼ型心筋症はストレスを契機に発症し、心基部の過収縮と心尖部の収縮低下を特徴とする。房室ブロックを合併することはまれであり、心電図も心筋梗塞に類似したST上昇を認めるはずである。
e 急性肺動脈塞栓症であれば心筋逸脱酵素の上昇は認めず、心エコーにて左室駆出率は正常で右室の拡大を認めるはずである。

正答率:94%

テーマ:急性心筋炎の診断

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