114C72

次の文を読み、以下の問いに答えよ。

76歳の女性。全身倦怠感と食欲不振を主訴に来院した。

現病歴:65歳時に高血圧症および骨粗鬆症と診断され、かかりつけ医にて内服加療を受けていた。2か月前から変形性膝関節症の治療を受けていたが、立位や歩行時の痛みが強く、ベッド上で過ごすことが増えていた。1週前から食欲が徐々に低下していた。3日前から全身倦怠感の訴えがあり、ベッド上からほぼ動かなくなった。同居していた家族が心配し、付き添われて受診した。

既往歴:74歳時に脳梗塞を発症。

生活歴:左上下肢の不全麻痺としびれ感が残っており、杖歩行であるが身の回りのことは1人でできていた。喫煙歴と飲酒歴はない。

家族歴:父親が68歳時に肺癌で死亡。

現 症:意識は清明。身長155cm、体重41kg。体温36.2℃。脈拍104/分、整。血圧86/54mmHg。呼吸数16/分。SpO2 97%(room air)。眼瞼はくぼんでいる。眼瞼結膜は貧血を認めない。口腔粘膜は乾燥している。頸静脈は虚脱している。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。左上下肢に麻痺を認める。

検査所見:尿所見:蛋白(−)、潜血(−)、糖(−)。血液所見:赤血球396万、Hb 12.1g/dL、Ht 39%、白血球8,600、血小板25万。血液生化学所見:総蛋白6.2g/dL、アルブミン3.1g/dL、AST 34U/L、ALT 12U/L、LD 221U/L(基準120〜245)、ALP 352U/L(基準115〜359)、CK 38U/L(基準30〜140)、尿素窒素52mg/dL、クレアチニン2.2mg/dL、血糖104mg/dL、Na 142mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 108mEq/L、Ca 12.4mg/dL、P 3.6mg/dL。CRP 0.2mg/dL。改訂長谷川式簡易知能評価スケールは26点(30点満点)。

入院後、病棟薬剤師が確認したこの患者のお薬手帳を示す。

○△医院
患者名:厚生 花子
患者ID:114-0021
医師名:労働 一郎
処方日:2019/12/08
Rx 1 アムロジピン 5mg錠 1回1錠
〈降圧薬〉 (1日1回) 朝食後 28日分
Rx 2 アスピリン 100mg錠 1回1錠
〈抗血小板薬〉 (1日1回) 朝食後 28日分
Rx 3 メコバラミン 500μg錠 1回1錠
〈ビタミンB12 (1日3回) 朝昼夕食後 28日分
Rx 4 アルファカルシドール 1μg錠 1回1錠
〈活性型ビタミンD〉 (1日1回) 朝食後 28日分
Rx 5 ロキソプロフェン 60mg錠 1回1錠
〈NSAID〉 (1日3回) 朝昼夕食後 28日分

中止すべき薬剤はどれか。3つ選べ

降圧薬
抗血小板薬
ビタミンB12
活性型ビタミンD
NSAID

解答: a,d,e

114C72の解説

高齢女性の全身倦怠感と食欲不振。5つの薬剤を服用しているため、その副作用が考えやすい。ポイントは血中Caの値であろう。アルブミン補正後は12.4+4−3.1=13.3mg/dLと高度上昇している。高カルシウム血症による症状が考えやすい。
a 正しい。血圧が86/54mmHgと低下しているため、降圧薬は中止すべきだ。
b 特に出血傾向がみられているわけではないため、継続してよい。
c しびれに対して対症療法的に用いられる薬剤である。継続して構わない。
d 正しい。高カルシウム血症の元凶である。中止したい。
e 正しい。NSAIDによる腎障害が尿中へのカルシウム排泄を抑制している可能性がある。実際、血液中の尿素窒素とクレアチニンは上昇している。

正答率:91%

テーマ:【長文1/3】高齢者の病歴から判断する中止すべき薬剤

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