114C66

次の文を読み、以下の問いに答えよ。

80歳の男性。ふらつきを主訴に来院した。

現病歴:約半年前から家族との会話に積極的に加わらなくなり、家族からの問いかけにも答えないことがあったが、大きな声で話しかければ普通に会話ができており、挨拶も自発的にできていた。約2か月前から屋内外で歩行時にふらつきがみられるようになり、最近、転倒するようになった。公共交通機関を1人で利用することができなくなったため、家族に付き添われて受診した。

既往歴:特記すべきことはない。

生活歴:妻と息子夫婦の4人雑らし。喫煙歴はなく、飲酒は機会飲酒。入浴、トイレ動作は可能である。

家族歴:特記すべきことはない。

現 症:意識は清明。身長164cm、体重58kg。体温36.6℃。脈拍72/分、整。血圧132/76mmHg。呼吸数12/分。甲状腺腫と頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。神経診察において、Weber試験では左に偏位している。軽度の構音障害を認めるが、失語はない。3物品(桜・猫・電車)の即時再生には問題ないが、遅延再生は困難である。立方体の模写と時計描画試験は不正確である。上肢Barré徴候は陰性で、四肢腱反射に異常を認めず、病的反射を認めない。指鼻試験で両側上肢に測定障害を認める。歩行は開脚不安定で、つぎ足歩行は困難である。Romberg徴候は陰性で、表在感覚および深部感覚に異常は認めない。

検査所見:血液所見:赤血球450万、Hb 14.0g/dL、Ht 42%、白血球5,600、血小板30万。血液生化学所見:総蛋白7.8g/dL、アルブミン4.0g/dL、総ビリルビン1.0mg/dL、AST 16U/L、ALT 18U/L、LD 210U/L(基準120〜245)、ALP 250U/L(基準115〜359)、γ-GT 18U/L(基準8〜50)、CK 80U/L(基準30〜140)、尿素窒素20mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、尿酸5.0mg/dL、血糖88mg/dL、トリグリセリド150mg/dL、HDLコレステロール40mg/dL、LDLコレステロール140mg/dL、Na 145mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 104mEq/L。CRP 0.1mg/dL。頭部MRIのT2*強調水平断像(A〜C)を別に示す。

神経診察所見から判断される病巣として考えにくいのはどれか

海馬
頭頂葉
小脳半球
脊髄後索

解答: e

114C66の解説

高齢男性のふらつき。画像では微小出血を疑う低信号域が散見される。認知症がみられていることとあわせ、脳アミロイドアンギオパチーが考えやすい。
a Weber試験で異常がみられており、VIII脳神経(橋に核をもつ)の障害が考えられる。
b 遅延再生が困難であり、認知機能(海馬が深く関わる)の障害が考えられる。
c 構成障害(立方体の模写や時計描画試験が不正確)がみられており、頭頂葉障害が考えやすい。
d 指鼻試験で異常がみられており、歩行障害(開脚不安定・つぎ足歩行困難)と合わせ、小脳半球の障害が考えられる。
e 誤り。脊髄後索の障害では深部感覚に異常がみられるはずである。また、Romberg徴候は陽性となる。

正答率:95%

テーマ:【長文1/3】神経学的所見から判断される病巣

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