114C39

82歳の男性。歩行困難を主訴に来院した。IgA腎症による慢性腎不全で14年前から1回4時間、週3回の血液透析を受けている。2年前から歩行速度が低下し、最近は横断歩道を渡りきれないことがある。階段昇降も両手で手すりにつかまらないと困難で、通院以外の外出を控えるようになったという。体重は1年前から5kg減少し、このまま歩けなくなることを心配して受診した。身長167cm、体重47kg(透析直後体重46kg)。脈拍72/分、整。血圧138/72mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。浮腫はない。徒手筋力テストで両下肢とも4である。その他、神経診察に異常を認めない。両足背動脈は左右差なく触知する。血液所見:赤血球338万、Hb 11.0g/dL、Ht 33%、白血球5,200、血小板14万。血液生化学所見:総蛋白6.8g/dL、アルブミン3.6g/dL、AST 22U/L、ALT 18U/L、LD 178U/L(基準120〜245)、CK 38U/L(基準30〜140)、尿素窒素72mg/dL、クレアチニン7.8mg/dL、尿酸7.4mg/dL、Na 138mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 101mEq/L、Ca 9.2mg/dL、P 5.6mg/dL。CRP 0.1mg/dL。

歩行困難の原因として考えられるのはどれか。

腎性貧血
高尿酸血症
高リン血症
サルコペニア
閉塞性動脈硬化症

解答: d

114C39の解説

高齢男性の歩行困難。筋肉量の低下、筋力の低下、身体能力の低下、という3つの基準を満たしており、サルコペニアと診断可能。
a 確かにBUNやクレアチニンは上昇しており、Hbは若干低下気味。しかしながら少なくとも10g/dLは超えており、貧血による歩行困難を積極的に考える場面ではない。
b 確かに血中尿酸値は基準値をややoverしているが、高尿酸血症で痛風をきたしたから歩行困難になった、というわけではない。
c 確かに血中リンは上昇しているが、これは腎障害によるものと考えられる。歩行困難の原因とはならない。
d 正しい。上記の通り。
e 両足背動脈を触知しており、閉塞性動脈硬化症〈ASO〉による間欠性跛行は考えにくい。

正答率:90%

テーマ:サルコペニアの診断

フォーラムへ投稿

関連トピック

なし