114B42

現 症:意識は清明。身長154cm、体重49kg。体温35.9℃。心拍数80/分、整。血圧100/78mmHg。呼吸数22/分。SpO2 98%(マスク5L/分酸素投与下)。眼瞼結膜は貧血を認めず、眼球結膜に黄染を認めない。頸部リンパ節腫脹および甲状腺腫大を認めない。心音は胸骨右縁第2肋間を最強点とするIII/IVの収縮期駆出性雑音を聴取し、頸部への放散を認める。呼吸音は両側胸部にcoarse cracklesを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。両側下腿に軽度の圧痕性浮腫を認める。神経診察で異常を認めない。

検査所見:尿所見:蛋白(−)、糖(−)、ケトン体(−)、潜血(−)。血液所見:赤血球444万、Hb 13.5g/dL、Ht 41%、白血球6,900(好中球65%、好酸球2%、好塩基球0%、単球4%、リンパ球29%)、血小板22万。血液生化学所見:総ビリルビン0.5mg/dL、AST 21U/L、ALT 18U/L、LD 175U/L(基準120〜245)、ALP 166U/L(基準15〜359)、γ-GT 35U/L(基準8〜50)、CK 121U/L、尿素窒素20mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、血糖103mg/dL、Na 142mEq/L、K 3.9mEq/L、Cl 101mEq/L。脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉2,200pg/mL(基準18.4以下)。心電図(A)及び胸部エックス線写真(B、C)を別に示す。

この患者でみられる身体所見はどれか。

遅脈
II音の亢進
Kussmaul呼吸
腋窩に放散する収縮期心雑音
しゃがんだ時に減弱する心雑音

解答: a

114B42の解説

胸骨右縁第2肋間を最強点とし、頸部に放散する駆出性雑音を認めることから大動脈弁狭窄症〈AS〉を考える。ASでは進行すると、労作時に心拍出量を十分に得られず失神をきたす。また、拍出できなかった血液が貯留し両心不全をきたす。大動脈弁の石灰化は加齢と共に進行するため、高齢化社会の日本では罹患者が増加している。画像ではAにてV4〜6のR波増高と陰性T波がみられる(左室肥大の所見)。B・Cにて心拡大と肺うっ血、胸水貯留が指摘可能。心不全に矛盾しない画像所見である。
a 正しい。ASでは遅脈と小脈とを認める。
b II音の亢進は大動脈弁閉鎖不全症や高血圧症で認められる。
c Kussmaul呼吸は糖尿病性ケトアシドーシス〈DKA〉でみられる。
d ASに特徴的なのは頸部に放散する収縮期雑音である。腋窩には放散しない。
e しゃがんだ(蹲踞)ときに症状が改善するのはFallot四徴症〈TOF〉である。

正答率:94%

テーマ:【長文2/2】大動脈弁狭窄症〈AS〉の症候

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