114B32

70歳の女性。突然の胸背部痛と呼吸困難のため救急車で搬入された。洗濯物を干していたとき、突然、激烈な胸背部痛を自覚した。発症10分後くらいから息苦しさが出現し、喘鳴も生じてきたため救急車を要請した。意識レベルはJCS II-10。心拍数110/分、整。血圧は76/38mmHgで左右差を認めない。呼吸数24/分。SpO2 94%(リザーバー付マスク10L/分酸素投与下)。冷汗を認め、皮膚は湿潤している。両側胸部にcoarse cracklesを聴取する。胸骨左縁第3肋間を最強とするIII/VIの拡張期雑音を認める。血液所見:赤血球350万、Hb 11.6g/dL、Ht 39%、白血球9,600、血小板21万。血液生化学所見:AST 30U/L、ALT 26U/L、尿素窒素14mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、血糖99mg/dL、Na 136mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 100mEq/L。心電図では明らかなST-T変化は認めない。胸部エックス線写真(A)及び心エコー図(B、C)を別に示す。

適切な対応はどれか。

緊急手術
降圧薬投与
胸腔ドレナージ
経皮的冠動脈形成術
大動脈内バルーンパンピング〈IABP〉挿入

解答: a

114B32の解説

突然の胸背部痛と呼吸困難を認め救急搬送された70歳女性。意識障害と血圧低下、脈拍上昇を認めショックを呈している。胸骨左縁第3肋間の拡張期雑音からは、大動脈弁閉鎖不全症を疑う。coarse cracklesを聴取し、胸部エックス線(心拡大と肺うっ血)と心エコー(上行大動脈の拡張と解離腔・flap、心嚢液貯留)所見とを合わせると、Stanford A型急性大動脈解離並びに心タンポナーデ、大動脈閉鎖不全症からのショック状態であると考えられる。
a 正しい。Stanford A型大動脈解離では緊急手術を行う。
b 搬入時血圧は低下しており、降圧薬は禁忌である。★禁忌★
c 心嚢液が貯留しており、ドレナージするとすれば心嚢ドレナージである。
d 心筋梗塞に対する治療である。本症例では心電図にて明らかなST-T変化を認めないことから心筋梗塞は考えにくい。
e 急性大動脈解離の患者にIABP挿入は更に解離腔を広げる恐れがあり禁忌である。また、大動脈弁閉鎖不全症もIABPの禁忌となる。★禁忌★

正答率:99%

テーマ:大動脈解離への治療

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