114A34

84歳の男性。全身倦怠感と尿量の減少を主訴に来院した。3年前に胃癌の診断で幽門側胃切除術を受けたが、2年前から受診を中断している。3週前から全身倦怠感が出現し、5日前から尿量が減少したため受診した。意識は清明。体温36.7℃。脈拍80/分、整。血圧140/84mmHg。呼吸数18/分。眼瞼結膜は軽度貧血様で、眼球結膜に黄染を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、上腹部に手術痕を認める。両下肢に圧痕性浮腫を認める。血液所見:赤血球382万、Hb 11.1g/dL、Ht 35%、血小板10万。血液生化学所見:アルブミン3.2g/dL、総ビリルビン1.3mg/dL、AST 38U/L、ALT 42U/L、LD 230U/L(基準120〜245)、尿素窒素40mg/dL、クレアチニン2.8mg/dL、Na 132mEq/L、K 5.6mEq/L、Cl 98mEq/L、CEA 7.8ng/mL(基準5以下)、CA19-9 69U/mL(基準37以下)。CRP 2.1mg/dL。腹部超音波検査で膀胱内に尿を認めない。胸部エックス線写真で心胸郭比56%。腹部単純CTを別に示す。

まず行う処置として適切なのはどれか。

血液透析
大量輸液
利尿薬投与
尿管ステント留置
尿道カテーテル留置

解答: d

114A34の解説

全身倦怠感と尿量の減少を主訴に来院した84歳男性。3年前に胃癌の手術を受けていることと、CEAやCA19-9の上昇から癌の再発・転移を考える。CTにて水腎症を認めるも腹部超音波検査にて膀胱内に尿を認めないことから、腎と膀胱の間に障害物がある、つまり癌の後腹膜浸潤によって乏尿または無尿をきたしていると考える。
a K>6mEq/L、Cr>7mg/dL、BUN>80mg/dL、HCO3-<15mEq/Lの時に透析を考慮する。
b 尿の通過障害を解除する前に大量輸液をしては病態が悪化してしまう。
c 尿の通過障害によって尿量減少が起こっているため、利尿薬を投与しても意味がない。
d 正しい。尿管ステントを挿入し通過障害を解除する。
e 膀胱に尿がたまっていないことから、もっと上流のトラブルである。尿道にカテーテルを入れても意味がない。

正答率:94%

テーマ:胃癌の後腹膜転移による両側水腎症へまず行う処置

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