114A26

38歳の初妊婦(1妊0産)。発熱、悪寒および腹部緊満を主訴に来院した。妊娠30週。妊娠経過は順調で胎児の発育も問題ないと言われていた。既往歴に特記すべきことはない。意識は清明。身長161cm、体重60kg。体温38.8℃。脈拍96/分、整。血圧120/74mmHg。呼吸数20/分。胎児心拍数陣痛図で頻脈を認めるが基線細変動は中等度、一過性頻脈を認めるが一過性徐脈は認めなかった。尿所見:色調は黄色、比重1.010、pH 6.0、蛋白(−)、糖(−)、ケトン体(−)、潜血(−)、沈渣に赤血球0〜1/HPF、白血球10〜19/HPF。血液所見:赤血球388万、Hb 12.0g/dL、Ht 35%、白血球13,100(桿状核好中球17%、分葉核好中球61%、好酸球2%、好塩基球0%、単球10%、リンパ球10%)、血小板25万。血液生化学所見:総ビリルビン1.0mg/dL、AST 32U/L、ALT 24U/L、尿素窒素12mg/dL、クレアチニン0.5mg/dL、血糖98mg/dL、Na 136mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 100mEq/L。尿培養と血液培養の検体を採取した後にセフトリアキソンの経静脈投与を開始した。翌日、血液培養が2セットとも陽性になったと連絡を受けた。連絡を受けた時点で体温38.5℃、腹部緊満は持続していた。血液培養ボトル内容の塗抹Gram染色写真を別に示す。

適切な抗菌薬治療の方針はどれか。

アンピシリンに変更する。
感受性試験結果が出るまでセフトリアキソンを継続する。
セフトリアキソンを中止して経過を観察する。
メロペネムに変更する。
レボフロキサシンに変更する。

解答: a

114A26の解説

発熱と悪寒、腹部膨満を主訴に来院した妊娠30週の初妊婦。妊婦の感染は早産を惹起するため、血液、尿培養を採取した後すぐに抗生剤の投与を開始した。血液培養からはGram陽性桿菌が検出され、妊婦に感染しやすい菌であるリステリアを疑う。Gram染色では、青〜紫がかった色であり、Gram陽性菌である。また、形は細長く桿菌である。
a 正しい。アンピシリンはペニシリン系抗菌薬で妊婦に使用可能かつリステリアに有効である。直ちに変更する。
b セフェム系抗菌薬はリステリアに無効であるため、抗菌薬を変更する必要がある。
c 妊婦の感染は早産を惹起する。また、リステリアは胎内感染もきたすため経過観察してはいけない。
d カルバペネム系抗菌薬で、広域スペクトラムを有する。原因菌が判明しているためわざわざ広域にする必要はない。
e ニューキノロン系抗菌薬は妊婦に禁忌である。★禁忌★

正答率:41%

テーマ:Gram染色の結果を受けた後の抗菌薬治療方針

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