113F80

次の文を読み、80~82の問いに答えよ。

67歳の男性。突然の嚥下困難のため救急車で搬入された。

現病歴:本日、昼食中に突然、後頭部痛、めまい及び悪心を感じて嘔吐した。しばらく横になり様子をみていたが、帰宅した妻から声を掛けられ返答したところ、声がかすれて話しにくいことに気が付いた。水を飲もうとしたがむせて飲めなかった。心配した妻が救急車を要請した。

既往歴:40歳から高血圧症。

生活歴:妻と2人暮らし。喫煙は10本/日を45年間。飲酒は機会飲酒。

現 症:意識は清明。身長165cm、体重60kg。体温36.6℃。心拍数72/分、整。血圧160/90mmHg。呼吸数12/分。SpO2 97%(マスク4L/分酸素投与下)。甲状腺腫と頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。神経診察では、眼球運動に制限はなく複視はないが、構音障害と嚥下障害を認める。左上下肢の温痛覚が低下している。腱反射に異常を認めず、Babinski徴候は陰性である。

検査所見:血液所見:赤血球452万、Hb 13.1g/dL、Ht 40%、白血球5,300、血小板32万。血液生化学所見:総蛋白8.1g/dL、アルブミン4.2g/dL、総ビリ ルビン1.0mg/dL、AST 15U/L、ALT 18U/L、LD 280U/L(基準176~353)、ALP 213U/L(基準115~359)、γ-GTP 18U/L(基準8~50)、CK 50U/L(基準30~140)、尿素窒素20mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、尿酸4.2mg/dL、血糖82mg/dL、トリグリセリド185mg/dL、HDLコレステロール40mg/dL、LDLコレステロール200mg/dL、Na 145mEq/L、K 3.9mEq/L、Cl 104mEq/L。CRP 0.2mg/dL。頭部MRI拡散強調像を別に示す。

この患者でみられる可能性が高いのはどれか。

左小脳性運動失調
左顔面温痛覚低下
右Horner症候群
右上下肢運動麻痺
右上下肢振動覚低下

解答: c

113F80の解説

高齢男性の突然の嚥下困難。現病歴の発症様式からは脳梗塞が考えやすい。「構音障害と嚥下障害を認める。左上下肢の温痛覚が低下している」という記載から、Wallenberg症候群〈延髄外側症候群〉を思い浮かべよう。画像では延髄右側に高信号域がみられ、この部分で梗塞が起こっていることが予想される。
a 右小脳性運動失調をみる。
b 右顔面温痛覚低下をみる。
c 正しい。右Horner症候群がみられる。
d 錐体路は障害されないため、運動麻痺はみられない。
e 深部覚は障害されないため、振動覚低下はみられない。

正答率:82%

テーマ:【長文1/3】Wallenberg症候群〈延髄外側症候群〉の症候

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