113E42

次の文を読み、42、43の問いに答えよ。

81歳の女性。倦怠感と食欲不振を主訴に来院した。

現病歴:4年前に子宮頸癌と診断され、放射線治療を受けたが、1年前に再発した。患者の希望により追加の治療は行わず経過観察とされていた。3か月前から不正性器出血がみられ、食欲不振が出現した。また、肛門周囲の痛みも出現し、オピオイドを内服していた。1か月前から徐々に身の回りのことができなくなってきた。支えがあればポータブルトイレに移乗できたが、ふらつきが強く徐々に難しくなってきており、現在はオムツ内排泄の状態である。倦怠感が強く、食欲も低下し、水分のみ摂取可能である。悪心はあるが、嘔吐はない。

生活歴:喫煙歴はなく、飲酒は機会飲酒。夫(84歳)と2人暮らし。

家族歴:特記すべきことはない。

現 症:意識は清明。身長153cm、体重42kg。体温36.5℃。脈拍92/分、整。血圧128/76mmHg。呼吸数16/分。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜に軽度の貧血を認める。眼球結膜に黄染を認めない。口腔内に異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。両側下腿に中等度の圧痕性浮腫を認める。

検査所見:尿はオムツ内排泄のため検査できず。血液所見:赤血球348万、Hb 10.4g/dL、Ht 32%、白血球8,800、血小板21万。血液生化学所見:総蛋白6.3g/dL、アルブミン2.0g/dL、総ビリルビン0.6mg/dL、AST 13U/L、ALT 9U/L、LD 182U/L(基準176~353)、γ-GTP 12U/L(基準8~50)、CK 42U/L(基準30~140)、尿素窒素86mg/dL、クレアチニン6.1mg/dL、尿酸10.7mg/dL、血糖104mg/dL、Na 131mEq/L、K 5.3mEq/L、Cl 101mEq/L、Ca 7.6mg/dL。心電図で異常を認めない。胸部エックス線写真で心胸郭比53%。

次に行うべきなのはどれか。

膀胱鏡検査
急速大量輸液
排泄性尿路造影
腹部超音波検査
カリウム吸着剤の注腸

解答: d

113E42の解説

高齢女性の倦怠感と食欲不振。現病歴にはいろいろな記載があるが、本患者の主訴に直結する問題点を見定めることが必要となる。ポイントはクレアチニン6.1mg/dLと高度上昇していることだ。子宮頸癌再発もあり、後腹膜浸潤からの両側尿管閉塞、そして腎後性腎不全に至っている可能性が高い。
a 膀胱内に腫瘍がある可能性もゼロではないが、なんとも言えない。超音波検査やCT等実施してある程度見通しを立ててからならまだしも、侵襲ある検査であり、現時点で真っ先に行うべきではない。
b 尿管閉塞で尿のうっ滞が考えられるわけで、急速大量輸液は水分貯留を悪化させかねない。
c クレアチニン6.1mg/dLの腎不全患者に排泄性尿路造影は禁忌。
d 正しい。まずは腹部超音波検査で病態を探るべきである。
e K 5.3mEq/Lと高度上昇はしておらず、カリウム吸着剤の注腸は不要である。
※本問で腎後性腎不全だと気づかなくても、次の問題で「腎機能障害は改善したが」とあるため、あらためてクレアチニン等に目を配ることは試験会場で十分に可能であったと思われる。

正答率:84%

テーマ:【長文1/2】腎後性腎不全の検査

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