113D34

63歳の男性。繰り返す数秒間の意識消失を主訴に救急車で搬入された。昨夕、テレビを見ている時、胸部の違和感が出現し、その直後に目の前が真っ暗になり5秒程度意識を失った。今朝から30分に1回くらいの間隔で、同様の数秒間の失神発作を繰り返したため、家族が救急車を要請した。意識消失に一致して心電図モニターに異常波形(A)を認め、このとき脈拍を触知しなかった。既往歴は10年前から高血圧症とうつ病で、サイアザイド系降圧利尿薬、カルシウム拮抗薬および三環系抗うつ薬を内服している。家族歴に特記すべきことはない。非発作中の意識は清明。脈拍60/分、整。血圧136/78mmHg。呼吸数16/分。SpO2 98%(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球458万、Hb 12.9g/dL、Ht 45%、白血球7,600、血小板16万。血液生化学所見:総蛋白7.2g/dL、アルブミン3.7g/dL、AST 32U/L、ALT 26U/L、LD 240U/L(基準176~353)、CK 112U/L(基準30~140)、尿素窒素16mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、血糖98mg/dL、Na 140mEq/L、K 1.9mEq/L、Cl 99mEq/L、Ca 11.2mg/dL。CRP 0.1mg/dL。非発作時の12誘導心電図(B)を別に示す。心エコー検査で軽度の左室壁肥厚を認めるが壁運動は正常範囲内である。

この時点の対応として適切でないのはどれか。

カリウムの補正
ループ利尿薬の投与
三環系抗うつ薬の中止
マグネシウム製剤の投与
心電図モニター監視の継続

解答: b

113D34の解説

繰り返す数秒問の意識消失を主訴に救急車で搬入された63歳の男性。前駆症状として胸部の違和感があったという。心電図モニターでは多形性心室頻拍(torsade de pointes)を認め、Adams-stokes症候群と考える。来院時の身体所見は正常であるが、K 1.9mEq/Lと低下し、非発作時の12誘導心電図ではQT延長を認める。QT延長からのTdPと考える。
a カリウム低下は致死的不整脈を来すため、直ちに補正する。ただし、急速静注は心停止を来すため禁忌である。必ず緩徐に投与すること。
b 誤り。ループ利尿薬はカリウムを低下させるため現時点では投与してはいけない。また、現在心不全を来していないため投与する理由もない。
c 三環系抗うつ薬はQT延長の誘因となる。また勝手に中止するだけでなく、その代替薬について精神科医にコンサルトすることを忘れずに。
d マグネシウム製剤の投与はTdPに有効とされている。
e TdPが停止しない場合や心室細動に移行した場合直ちに除細動を行う必要がある。心電図モニターの継続は必須である。

正答率:90%

テーマ:多形性心室頻拍〈TdP〉への対応

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