113D32

65歳の女性。2年前から物の名前や言葉が思い浮かばず、ろれつも回りづらくなり、会話がたどたどしくなってきた。1年前から徐々に右手の動きがぎこちなくなり、ボタン掛けや箸使いが困難になってきた。最近、右手が勝手に動き、自分の意志では制御できなくなってきたため受診した。意識は清明。身長153cm、体重43kg。体温36.1℃。脈拍72/分、整。血圧118/68mmHg。改訂長谷川式簡易知能評価スケール19点(30点満点)、Mini-Mental State Examination〈MMSE〉22点(30点満点)。発語は努力性で非流暢であり、発音も明瞭ではないが、言語理解は保たれている。右上肢には衣服をまさぐるような動きが断続的にみられ、制止を指示すると自らの左手で右手を抑制する。右上肢には高度の筋強剛がみられるが、左上下肢の筋緊張は正常である。筋萎縮や振戦は認めない。四肢の腱反射は正常で、Babinski徴候を認めない。歩行では右下肢の振り出しに遅れがみられる。頭部MRIのT1強調冠状断像を別に示す。

最も考えられるのはどれか。

Parkinson病
前頭側頭型認知症
Alzheimer型認知症
特発性正常圧水頭症
大脳皮質基底核変性症

解答: e

113D32の解説

高齢女性の言語障害、運動障害、認知症、Parkinsonism。「四肢の腱反射は正常で、Babinski徴候を認めない」とあるため、錐体路障害はないようだ。「右上肢には衣服をまさぐるような動きが断続的にみられ、制止を指示すると自らの左手で右手を抑制する」のは他人の手現象。画像では左シルビウス裂優位な脳萎縮がみられる(☞「左右差」のキーワード)。大脳皮質基底核変性症〈CBD〉が考えやすい。
a Parkinson病では振戦をみる。
b 前頭側頭型認知症では文字通り前頭葉と側頭葉中心の脳萎縮がある。
c Alzheimer型認知症では運動障害やParkinsonismをみない。
d 特発性正常圧水頭症では両側性の脳室拡大をみる。
e 正しい。上記の通り。

正答率:80%

テーマ:大脳皮質基底核変性症〈CBD〉の診断

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