113C30

72歳の女性。下腹部痛と血便のため救急外来を受診した。本日就寝前に急激な下腹部痛と下痢が出現した。数回の下痢に続いて鮮紅色の血便が出現したため受診した。20年前から糖尿病と高血圧症で自宅近くの診療所に通院している。意識は清明。体温37.2℃。脈拍96/分、整。血圧142/92mmHg。呼吸数20/分。SpO2 96%(room air)。腹部は平坦で、左下腹部に自発痛と圧痛を認める。筋性防御を認めない。血液所見:赤血球380万、Hb 11.4g/dL、Ht 39%、白血球11,200(桿状核好中球4%、分葉核好中球55%、好酸球2%、単球7%、リンパ球32%)、血小板23万。血液生化学所見:総蛋白6.9g/dL、アルブミン3.8g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 24U/L、ALT 27U/L、LD 267U/L(基準176~353)、アミラーゼ60U/L(基準37~160)、尿素窒素21mg/dL、クレアチニン1.1mg/dL、尿酸6.6mg/dL、血糖138mg/dL、HbA1c 6.9%(基準4.6~6.2)、Na 141mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 99mEq/L。CRP 2.1mg/dL。動脈血ガス分析(room air):pH 7.41、PaCO2 36Torr、PaO2 90Torr、HCO3- 24mEq/L。

最も考えられる疾患はどれか。

虚血性腸炎
薬物性腸炎
肛門周囲膿瘍
好酸球性胃腸炎
上腸間膜動脈閉塞症

解答: a

113C30の解説

高齢女性の下腹部痛と血便。糖尿病と高血圧症という動脈硬化の原因となる背景疾患があり、鮮紅色の血便がみられている。虚血性腸炎を疑う。左下腹部に痛みがみられているのも特徴的。
a 正しい。上記の通り。
b 入院下での抗菌薬投与といったエピソードに欠け、薬物性腸炎(偽膜性腸炎など)は否定的。
c 左下腹部痛で肛門病変を真っ先に考える者はおるまい。ナンセンス選択肢。
d これもc同様、左下腹部痛で胃腸炎は考えにくい。また血液中の好酸球数も正常値であり、否定的(むろん血液中の好酸球数が上昇しない好酸急性胃腸炎もあるが、1つの除外目安として)。
e 上腸間膜動脈閉塞症は心房細動〈AF〉による血栓が原因となることが多い。本患者では脈拍整であり考えにくい。むろん、AFによらないものや、発作性AFで今は整にみえているだけ、という可能性もあるが、「筋性防御を認めない」という記載や、左下腹部に痛みが限局している点(上腸間膜動脈は小腸〜横行結腸までを広汎に栄養する)、造影CT等の提示がない点から敢えて選ぶべき肢ではない。

正答率:98%

テーマ:虚血性大腸炎の診断

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