113A58

72歳の男性。幻視を主訴に来院した。1年前から睡眠中に怒鳴ったり、布団を蹴って足をバタバタしていると妻に指摘されるようになった。このころから時々立ちくらみを自覚していた。半年前から徐々に食事や着替えの動作が遅くなった。1か月前から夜中に「部屋の中で見知らぬ人が踊っている」と訴えるようになったため、家族に付き添われて受診した。喫煙は10本/日、飲酒はビール350mL/日。意識は清明。身長163cm、体重56kg。体温36.4℃。脈拍68/分、整。血圧158/86mmHg。呼吸数16/分。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。改訂長谷川式簡易知能評価スケール23点(30点満点)、Mini-Mental State Examination〈MMSE〉25点(30点満点)。脳神経に異常を認めない。四肢で左右対称性に軽度の筋強剛を認める。腱反射は正常で、運動麻痺、感覚障害および運動失調を認めない。姿勢は前かがみで歩行は小刻みである。尿所見に異常を認めない。血液所見:赤血球342万、Hb 10.7g/dL、Ht 32%、白血球8,300、血小板14万。血液生化学所見:総蛋白7.4g/dL、アルブミン3.8g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 42U/L、ALT 48U/L、LD 354U/L(基準176~353)、γ-GTP 56U/L(基準8~50)、アンモニア32μg/dL(基準18~48)、尿素窒素17mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、血糖112mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 104mEq/L。CRP 0.3mg/dL。

診断に最も有用なのはどれか。

血中CK
頭部MRI
脳脊髄液検査
脳血流SPECT
腹部超音波検査

解答: d

113A58の解説

高齢男性の幻視。長谷川式やMMSEでの低下(☞認知症)、筋強剛や小刻み歩行(☞Parkinsonism)と合わせ、Lewy小体型認知症〈DLB〉の診断。「睡眠中に怒鳴ったり、布団を蹴って足をバタバタしている」という症候はREM睡眠行動障害によるものと考えられる。
a DLBは筋の疾患ではないため、血中CK測定は無効。
b 頭部MRIで非特異的な変化を認める可能性はあるが、診断にはつながらない。
c 脳脊髄液検査で異常は予想されない。
d 正しい。脳血流SPECTで後頭葉優位な血流低下を示すことが診断につながる。
e 腹部超音波検査で異常は予想されない。

正答率:98%

テーマ:Lewy小体型認知症〈DLB〉の診断に有用な検査

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