113A26

32歳の女性。めまいを主訴に来院した。今朝、耳掃除をしていたところ、子どもに後ろから抱きつかれ、右耳に耳かき棒が入った。聴力低下とぐるぐる回るめまいを自覚し、症状の改善がないため受診した。右耳鳴も持続している。右鼓膜に小さな穿孔を認め、聴力検査で右耳に軽度の聴力低下を認める。気導骨導差10dB。側頭骨CTで明らかな異常を認めない。

数日以内に出現した場合、緊急手術が必要となるのはどれか。

耳漏の出現
めまいの増悪
味覚障害の出現
鼓膜穿孔の拡大
気導骨導差の縮小

解答: b

113A26の解説

壮年女性のめまい。右耳に耳かき棒が入ったことを契機に聴力低下と耳鳴り、めまいがみられている。右鼓膜に小さな穿孔を認めており、耳かき棒が内耳まで侵入し、外リンパ瘻を呈した可能性が高い。外リンパ瘻は原則として安静にて自然閉鎖し、症状が改善していく。そのためまずは保存的治療とする。しかしながら、内耳症状が増悪する例や変動する例では瘻孔閉鎖術や内耳窓閉鎖術の適応となる。
a 耳漏は内耳症状ではない。
b 正しい。めまいの増悪は内耳症状の増悪だ。
c 味覚障害は顔面神経の枝である鼓索神経の障害によりみられる。鼓索神経は中耳を走行するため、内耳症状の増悪とは言えない。
d 鼓膜穿孔の拡大は内耳症状ではない。
e 気導骨導差はもともと10dBとほぼ存在していない。ゆえにこの差が縮小したところで、それは誤差の範囲であり、内耳症状の増悪とは言えない。
※正答率はかなり低く、難問だ。今回の解説ではロジカルさを重視し、極力多くの読者に納得してもらえるよう示した。が、実際の臨床現場では専門家により意見も分かれるところであろうし、もっと多くの情報を総合的に考えてカンファ等で判断的に判断される。

正答率:12%

テーマ:外リンパ瘻の緊急手術の適応要件

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