113A18

出生後12時間の新生児。在胎39週、出生体重3,820gで、児頭の吸引を3回施行した後に娩出された。Apgarスコアは6点(1分)、9点(5分)であった。出生時に両側の側頭部から後頭部にかけて波動性の血腫を触知した。徐々に頭部の血腫が拡大するとともに、出生9時間後からチアノーゼを伴う無呼吸が繰り返し出現したため、NICUに搬送された。体温36.3℃。心拍数156/分、整。血圧50/30mmHg。呼吸数60/分。SpO2 90%(room air)。前頭部から両側の上眼瞼にかけて皮膚が暗紫色を呈している。やや活気がなく、筋緊張は低下している。血液所見:赤血球257万、Hb 9.0g/dL、Ht 32%、白血球27,400、血小板15万、PT-INR 1.3(基準0.9~1.1)、APTT 46.6秒(基準対照37.1秒)、血漿フィブリノゲン150mg/dL(基準200~400mg/dL)。血液生化学所見:総蛋白4.5g/dL、アルブミン2.8g/dL、AST 88U/L、ALT 26U/L、LD 874U/L(基準198~404)、尿素窒素12mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、血糖146mg/dL、Na 133mEq/L、K 5.2mEq/L、Cl 104mEq/L。頭部単純MRIのT1強調像を別に示す。

患児に対する適切な治療はどれか。

抗菌薬の投与
病変部の穿刺
新鮮凍結血漿の投与
キサンチン系薬の投与
ブドウ糖・インスリン点滴静注

解答: c

113A18の解説

出生後12時間の新生児(吸引分娩を3回実施)に頭部の血腫がみられている。画像から帽状腱膜下血腫であることをつかもう(骨縫合を超えているため頭血腫ではない)。血圧50/30mmHgと赤血球257万からは出血からの循環血液量減少が疑われる。PT-INRとAPTTの延長から凝固因子が不足していることに由来する出血傾向と思われる。
a 細菌感染が問題となっているわけではないため不要。
b 一般に帽状腱膜下血腫や頭血腫には穿刺吸引を行わない。
c 正しい。凝固因子が不足しているため、新鮮凍結血漿の投与により補う。
d キサンチン系薬の代表例はテオフィリン。気管支拡張薬である。確かに「チアノーゼを伴う無呼吸が繰り返し出現」とはあるも、これは頭蓋内出血によるものであり、気管支が狭窄しているためではない。
e 高カリウム血症への治療。確かに今K 5.2mEq/Lと軽度上昇しているが、溶血が原因として考えやすい。真っ先に対処しないと致死性不整脈を呈するような高値ではないため、不要。

正答率:84%

テーマ:帽状腱膜下血腫の治療

フォーラムへ投稿

関連トピック

なし